岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

孤独な若者の美しくも儚い道行

2021年11月30日

少年の君

© 2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd., Shanghai Alibaba Pictures Co., Ltd., Tianjin Maoyan Weying Media Co., Ltd., Lianray Pictures, Local Entertainment, Yunyan Pictures, Beijing Jin Yi Jia Yi Film Distribution Co., Ltd., Dadi Century (Beijing) Co., Ltd., Zhejiang Hengdian Films Co., Ltd., Fat Kids Production, Goodfellas Pictures Limited. ALL Rights reserved.

【出演】チョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー
【監督】デレク・ツァン

格差やいじめは世界中にある でも足元の小石に気づくことも大切

若い女性教師が教壇に立っている。授業は英語で復唱する生徒たちの声が響く。その生徒たちのなかにひとり、俯いたままの少女がいる。女性教師はその事に気づく…よみがえる記憶。

2011年、安橋(架空の都市)の進学校に通う高校3年のチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)は、ある日、同級生の自殺に遭遇する。騒然となる現場…遠巻きに取り囲む生徒たちは、無遠慮にスマホのカメラを向けるだけ。それを見かねたチェン・ニェンは、地面に倒れているであろう彼女に、そっと自らの上着をかける。彼女の状況を承知していながらも、無視してしまったという後悔…彼女を死に追いつめたのは "いじめ" だった。しかし、対照を失った加害者の矛先は、理不尽にもチェン・ニェンに向かう。

彼女には家庭の問題も存在した。いかがわしい化粧品販売をする母親は、詐欺師と罵られ、借金取りから逃げる始末だったが、娘の将来のため、学費の捻出には苦心してくれていた。

同級生たちの陰湿ないじめが次第にエスカレートしていく。そんなある日の下校途中、少年たちの喧嘩の現場に遭遇したチェン・ニェンは、一方的な暴行を受けていたシャオペイ(イー・ヤンチェンシー)を成り行きで救うことになる。この運命の出会いがふたりを変える。

現在、経済大国となった中国は、資本主義の渦中にある。しかし、政治体制は共産党一党支配の社会主義を維持している。公平平等は幻想となり、明なか歪みや格差はあるが、幸福を希求する国民たちは、逞しく生きる道を模索する。進学を目指す高校たちは、夢を掴むための象徴のように見える。一方、社会の片隅に追いやられ、夢すら持てない若者もいる。

過酷を極める学歴社会と受験戦争、大学進学の予備校と化した殺伐とした学校、そこにある陰湿ないじめ。それは世界に共通する課題と強調する。 孤独を共有した若者の道行は、儚くも美しく感動的だが、体裁を装う体制の虚勢は、映画を台無しにする‥と、敢えて言いたくなることは何とも虚しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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