岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

響くのは銃声ではなく美しい音楽

2018年02月04日

永遠のジャンゴ

©2017 ARCHES FILMS – CURIOSA FILMS – MOANA FILMS – PATHÉ PRODUCTION - FRANCE 2 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA

【出演】レダ・カテブ、セシル・ドゥ・フランス
【監督・脚本】エチエンヌ・コマール

ジプシーJAZZの演奏シーンは圧巻!

 はじめにお断りしておかなければならないが、ジャンゴ・ラインハルトというアーティストの存在は知らなかった。この映画を観終わった後、音楽通のふたりの知り合いに、その存在を尋ねたところ、声をそろえて、“伝説のギタリスト“ だと迷わず指摘された。
 冒頭は森…独特の旋律を奏でる民族音楽が流れる…映し出されるのは集う人々の穏やかな風景。と、少年のこめかみに突きつけられる銃口…銃声とともに打ち破られる穏やかなひととき。射殺される歌の声の主である老人。暗い時代の暗示。
 場面は1943年、ナチス・ドイツ占領下のパリに移る。満員の観客に埋めつくされた客席、ミュージックホール・フォリー・ベルジェール。開演を待ちわびているのか、苛立ちが立ちこめている。舞台裏、慌ててふためく人たち。主役の不在。肝心の主役は酒瓶片手に釣りに興じている。ようやく楽屋に飛び込むと、取り巻きは衣装をまとわせ、素早い段取りで準備を整える。遅刻を叱る老母。兄弟、あるいは身内の仲間たち。音楽家を取り巻く関係性が見事に提示される。
 はじまる演奏。ジプシーJAZZの旋律…次第に高揚し、観客は立ちあがり、手拍子を交え一体となる。この演奏シーンは圧巻! 弦を弾く指先、コードを押さえるなめらかな指、音楽通でなくとも、鳥肌が立つ音楽=スゥイング、音色=メロディー。ギター奏者であるジャンゴ・ラインハルトの指が火傷によって不自由であることはあとでわかる。
 ナチスの迫害はユダヤ人だけにとどまらず、ジプシーにも向けられていた。ジャンゴはベルリン行きを拒否して、危機からの逃亡を選択する。ナチスものによくある残虐なシーンはないが、絶望感は静かに表現される。パリ解放後に演奏されるレクイエムは感動的!
 文中、ジプシーという言葉を使ったが、これは放送禁止語にあたる差別語だから、本来は“ロマ” という自称を使うのが適当。

『永遠のジャンゴ』は岐阜CINEXで2/3(土)より公開予定。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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