岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

理性に訴えかける社会派人間ドラマの傑作

2021年11月15日

由宇子の天秤

©️2020 映画工房春組 合同会社

【出演】瀧内公美、河合優実、梅田誠弘、松浦祐也、和田光沙、池田良、木村知貴、川瀬陽太、丘みつ子、光石研
【監督・脚本・編集】春本雄二郎

立場によって変わる正義の有り様を問う

西川美和監督の「すばらしき世界」、石井裕也監督の「茜色に焼かれる」、吉田恵輔監督の「空白」等、 今年の日本映画は大豊作で、ベストワン級の傑作が次々と登場。そして、春本雄二郎監督の「由宇子の天秤」もそれらに匹敵する傑作だ。

「由宇子の天秤」は、何の関係もない第三者が、過ちを犯した者を法的制裁以上に裁こうとする風潮のある現代情報化社会で、正義や真実が如何に曖昧なものであるかを掘り下げた、春本雄二郎監督のオリジナル脚本による社会派の人間ドラマである。

法を犯した者だけでなく、疑わしき者も、その家族さえも社会から排除されかねない、行き過ぎた正義が大手を振る不寛容な現代日本。身内が法を犯し、その秘密を知ってしまったならどうするか。ましてや、自身が真実を追及するジャーナリストであったなら。

女子高生いじめ自殺事件の真相を追うドキュメンタリー監督の由宇子(瀧内公実好演)は、一方で自分の父親の過ちを知り、真実と守らなければならないものとの板挟みで苦しむ。その重さを天秤で測り、究極の選択を迫られるのだ。

「由宇子の天秤」には音楽が入っていない。それは、春本監督が感情に訴えるより、理性に訴える映画を目指したからだろう。観る者に、あなたならどうすると問いかける必見の問題作である。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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