岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

真に行動した人土方歳三から見る幕末史

2021年10月19日

燃えよ剣

© 2021 「燃えよ剣」製作委員会

【出演】岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、伊藤英明
【監督・脚本】原田眞人

原田眞人監督作品は崩壊する組織への鎮魂歌

以前、書いた記憶がある。「幕末ものは嫌いだ!」と…。この気持ちに揺らぎはない。と、言いつつも、『燃えよ剣』はちゃんと初日に駆けつけている。映画ではないが、大河ドラマ「青天を衝け」も欠かすことなく観ている。これもれっきとした幕末もの。土方歳三も登場するから、見事にかぶっている。しかし、主役となる人物も視点も違うから、比較は出来ないし、それにはあまり意味はない。例えば、徳川幕府最後の将軍・慶喜の描き方。大河ドラマの草彅剛=慶喜は悩める智将として、がっつり描かれている。一方、『燃えよ剣』の山田裕貴=慶喜は数シーンしか登場しないものの、そこでは弱虫な狂気ぶりがデフォメル気味に描かれている。この違いは単なる解釈の違いだろうか?

さて、映画は土方歳三(岡田准一)の語りの形式をとっている。武州多摩の "バラガキ" と呼ばれた若き日の姿…それを語る土方の頭髪には既に髷はなく洋装である。

"新選組" は、はじめ、徳川幕府によって江戸で集められた浪士組という組織であった。隊員の選考基準があったのかはわからないが、当初は腕の立つ猛者たちが主流であったことは想像できる。

1863年、にわかに政の渦中となった京の治安維持の目的で京へ上り、主に警察のような活動を始める。

これまでも数多く描かれてきた "新選組" のイメージは、定着しているようで、実は、個人個人の思い込みが優先した、偏った固定概念と言えるのかもしれない。映画では組織の立ち上げから丹念に詳細に、年齢や身分を問わずに入隊した、様々な人物まで拾い上げる。

事件と呼べるような出来事を挟む細やかなつなぎの描写は、巧みな脚本構成の仕業で、ともすればダイジェストとなりかねない物語に厚みを持たせている。

幕末もののひとつの弱点は、"顔" が多すぎることで、思い入れの強弱で、疑問や不満が発生することは致し方ないし、この解消は至難であるから、そこから生じた難は指摘しない。

ひとつのクライマックス、池田屋襲撃のくだりは圧巻。しかし、随所に散らつく流麗な演出技が、時に鼻につくのは単なる妬みか、好き嫌いの問題か?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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