岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

酔っぱらって幸せになれる実験に挑む男たちの話

2021年10月18日

アナザーラウンド

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

【出演】マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネヴィー
【監督】トマス・ヴィンターベア

アルコール濃度0.05%を超えるのは酒好きの性か?

マーティン(マッツ・ミケルセン)には居場所がない。

  妻とのかみ合わない会話は、すれ違いの生活から生まれたものなのか? 冷めた夫婦の関係は息子2人にも伝播して、父親の尊厳も欠き半ば無視されている。

職場である高校の教室でも、生徒から授業の進行に注文をつけられる。諦めのような無気力な暗雲がマーティンを覆い尽くしていた。召集された父兄会では、早急の授業改革を要求される始末。

追い込まれたマーティンを励ますのは、同僚の3人の悪友。

子どものサッカーチームのコーチをしているトミー(トマス・ポー・ラーセン)は、愛犬と2人暮らし。

楽器の演奏を教えるピーター(ラース・ランゼ)は、独身で女性と酒には目がない。

ニコライ(マグナス・ミラン)は、幼い子どもに自分の領域を奪われがちで、妻とも喧嘩が絶えない。

マーティンを囲む会で話題になったのは、ノルウェーの哲学者が発表したある仮説だった。

『アナザーラウンド』はデンマーク映画で、第93回米・アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞、トマス・ヴィンターベアは監督賞にノミネートされた。映画に登場する酒、飲酒に関する感覚は、日本のそれとは格差を感じることが少なくない。例えば、フランス映画には、まだ、幼さの残る年齢の子どもが、食事中にワインを水のように飲むシーンが登場したりする。本作の冒頭は高校生と思しき子どもたちが挑戦する飲酒にまつわる乱痴気レースで、授業の中でも日常の飲酒についての会話が登場する。

「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」

というのが哲学者が提唱した仮説で、4人の高校教師たちは、この仮説を検証するという実験に挑戦することになる。

この仮説ってホントの話?と疑い半分の荒唐無稽な展開だが、当の本人たちは真面目に取り組む。

深刻な現実を抱えた男たちの行動に、大いに笑わされ、同時に考えさせられる。個人的には下戸なので、ちょっと引いた視線にはなるけれど、飲酒と偉人たちに関する興味深い話も登場し、満足濃度良好の快作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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