岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~ B! 「沈黙の詩人」マルセル・マルソーの知られざる歴史 2021年10月04日 沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~ ©2019 Resistance Pictures Limited. 【出演】ジェシー・アイゼンバーグ、クレマンス・ポエジー、マティアス・シュヴァイクホファー、フェリックス・モアティ、ゲーザ・ルーリグ、カール・マルコヴィクス、ヴィカ・ケレケシュ、ベラ・ラムジー、エド・ハリス、エドガー・ラミレス 【監督・脚本・製作】ジョナタン・ヤクボウィッツ パントマイムは笑いと涙を届ける「世界共通語」 喜劇王チャップリンは、身振り手振り、表情だけで表現するパントマイムこそが「世界共通語」と語り、トーキー出現後もサイレント映画にこだわり続けた。 そのチャップリンに憧れてパントマイミストになったのがマルセル・マルソー、本作の主人公である。 マルソーは何度か来日しているが、私は1989年4月27日に愛知文化講堂で開催された名古屋公演を観ている。白塗りの顔にしま模様の衣裳といういでたちで無言で演じられる神様のパフォーマンスは、世界の至宝を目の前で観られた感激と興奮の中、一挙手一投足を目に焼き付けた。 世界中の観客へ「世界共通語」のパントマイムで笑いと涙を届けてきたマルセル・マルソーが、青年の頃フランスでレジスタンスに参加し、123人のユダヤ孤児を救っていたという史実は、この映画を観るまで全く知らなかった。 きっと彼が有名になる前に命がけで行った救出活動は、自慢したり称賛されることなど一切考えておらず、シンドラーや杉原千畝のように、ただただ人の道として行っただけのことだからだ。 その若き日のマルセル・マルソーを演ずるのは、ジェシー・アイゼンバーグだ。「パントマイムの神様」とか「沈黙の詩人」と呼ばれたマルソーを演ずるプレッシャーは相当なものだったと思うが、パントマイム部分を含め見事に演じている。違和感は全くない。 フランス人のマルソーが、孤児となったドイツ人の子どもたちをなごませ笑わせるには、パントマイムがうってつけ。みんなを笑顔にさせる。 後半は、リヨンの虐殺者と恐れられたクラウス・バルビーの追及を逃れ、子どもたちをスイスへ送り届けるというスリリングなシーンが連続する。 そして戦後、マルソーは元ナチ党大会の会場で、連合軍兵士を前にパントマイムを披露する。彼が尊敬するチャンプリンの『独裁者』(1940)の、最後の演説に呼応するような名シーンだ。とてもいい映画である。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (11)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 手に汗握るヒューマン・サスペンスの秀作 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 二つの救出劇が紡ぐ戦火の友情 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 危険を顧みない友情とスリリングな逃亡劇の戦争娯楽映画 more 2020年09月30日 / 新宿武蔵野館(東京都) 創設百周年を迎えた新宿の伝説的映画館 2020年10月28日 / 別府ブルーバード劇場(大分県) 子供に夢を与えたいという思いから始まった映画館 2018年10月24日 / パルシネマしんこうえん(兵庫県) 神戸の下町で、館主こだわりの二本立てに興じる more
パントマイムは笑いと涙を届ける「世界共通語」
喜劇王チャップリンは、身振り手振り、表情だけで表現するパントマイムこそが「世界共通語」と語り、トーキー出現後もサイレント映画にこだわり続けた。
そのチャップリンに憧れてパントマイミストになったのがマルセル・マルソー、本作の主人公である。
マルソーは何度か来日しているが、私は1989年4月27日に愛知文化講堂で開催された名古屋公演を観ている。白塗りの顔にしま模様の衣裳といういでたちで無言で演じられる神様のパフォーマンスは、世界の至宝を目の前で観られた感激と興奮の中、一挙手一投足を目に焼き付けた。
世界中の観客へ「世界共通語」のパントマイムで笑いと涙を届けてきたマルセル・マルソーが、青年の頃フランスでレジスタンスに参加し、123人のユダヤ孤児を救っていたという史実は、この映画を観るまで全く知らなかった。
きっと彼が有名になる前に命がけで行った救出活動は、自慢したり称賛されることなど一切考えておらず、シンドラーや杉原千畝のように、ただただ人の道として行っただけのことだからだ。
その若き日のマルセル・マルソーを演ずるのは、ジェシー・アイゼンバーグだ。「パントマイムの神様」とか「沈黙の詩人」と呼ばれたマルソーを演ずるプレッシャーは相当なものだったと思うが、パントマイム部分を含め見事に演じている。違和感は全くない。
フランス人のマルソーが、孤児となったドイツ人の子どもたちをなごませ笑わせるには、パントマイムがうってつけ。みんなを笑顔にさせる。
後半は、リヨンの虐殺者と恐れられたクラウス・バルビーの追及を逃れ、子どもたちをスイスへ送り届けるというスリリングなシーンが連続する。
そして戦後、マルソーは元ナチ党大会の会場で、連合軍兵士を前にパントマイムを披露する。彼が尊敬するチャンプリンの『独裁者』(1940)の、最後の演説に呼応するような名シーンだ。とてもいい映画である。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。