岐阜新聞 映画部

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魂を揺さぶられる、超ド級の傑作映画誕生!

2021年10月06日

由宇子の天秤

©️2020 映画工房春組 合同会社

【出演】瀧内公美、河合優実、梅田誠弘、松浦祐也、和田光沙、池田良、木村知貴、川瀬陽太、丘みつ子、光石研
【監督・脚本・編集】春本雄二郎

由宇子も観客も、繰り返し選択を迫られる

上映時間2時間33分の本作を観ている間、私は映画がもたらす張り詰めた緊張感の中、木下由宇子(瀧内公美)の究極の選択を咀嚼しようと、まんじりともせずスクリーンを見つめていた。

映画は、手持ちカメラによる長回しで由宇子を追いかけ続ける。劇伴は一切なく、音楽によって感情の誘導はされない。観ていて楽な映画ではない。

しかし退屈することは全くない。それどころかあっという間に時間は過ぎてしまう。何故なら、展開がスピーディーで次から次へ新事実が発覚し予想外な方向へと物語が向かっていくからだ。

緻密に組み立てられた春本雄二郎監督のオリジナル脚本は破綻が無く、登場人物一人一人の背景や境遇もあぶり出される完璧なシナリオとなっている。

そして春本監督が影響を受けたという、キェシロフスキのようなまなざし、ダルデンヌ兄弟のようなドキュメンタリーさながらの演出、さらには瀧内公美、光石研(由宇子の父)、河合優実(高校生の萌)、梅田誠弘(萌の父)をはじめとする俳優たちの、人間の本質に迫る熱演。

これらすべてが奇跡のようなコラボを生み出し、今まで日本映画では観たことがなかったようなタイプの、超ド級の傑作映画が誕生したのだ。

3年前ある地方の高校で、教師と関係を持ったと疑われた女子生徒がいじめを苦に自殺する。潔白を訴えていた教師も自殺。その事件はスキャンダラスに報道され、SNSでもデマやフェイクが拡散する。その真実をドキュメンタリーとして追っていくというのがこの作品のプロットだ。

映画は、まずは一つの事実が示され、これに矛盾する他の事実が描かれたのち、さらに踏み込んだ新事実が判明する。それが繰り返し描かれ、由宇子も観客も選択を迫られる。

人間は評論家の立場と当事者の立場では、その行動や思考も変わってくる。さらにいま見えているものが本当に真実なのかもわからない。

魂を揺さぶられる傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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