岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

山田洋次監督の映画愛が溢れる、笑って泣ける映画

2021年09月28日

キネマの神様

©2021「キネマの神様」製作委員会

【出演】沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎/北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子
【監督】山田洋次

日本映画黄金時代の撮影所風景が素晴らしい

山田洋次監督は、1954年松竹大船撮影所に演出助手として入社。主に野村芳太郎監督につき、師の骨太なサスペンス映画から風刺の効いた喜劇など多彩な現場を間近で見て学び、1961年『二階の他人』でデビューした。

その後の活躍は凄まじく、キネ旬ベストテンには27本がランクイン(うちベストワン4本)、文化勲章受章者で日本藝術院会員という最高の栄誉に輝いている。

そしてデビューから60年、9月で御年90歳の山田監督の89本目の作品が、『キネマの神様』である。

映画は、ギャンブル依存で酒浸りの鼻つまみ者・現代のゴウ(沢田研二)の物語と、撮影所で夢を追いながら助監督として走り回る・若き日のゴウ(菅田将暉)のお話が、巧みにシンクロしながら描かれていく。

山田監督ならではの素敵なシーンも多く、なかでも日本映画黄金時代の撮影所風景が素晴らしい。助監督が映画会社の社員だった時代、多少の失敗があってもクビになることはなく、巨匠・名匠・職人肌など並みいる監督の下で働き、芸術論を闘わせながら大いに食い大いに呑む。

若き日のゴウは出水組(清水宏がモデル)に所属し、小田組(小津安二郎がモデル)の連中とは競って映画を作っている。夢の工場の生の現場を肌で知っている山田監督にしかできない活気あふれるシーンだ。

ただ残念に思う点もいくつかある。若き日のゴウが自分の思うよなシーンが撮れず、梯子から転げ落ちて撮影を放棄し会社をそのまま辞めてしまう。これはあまりにも無責任で、仕方がないと思えないところが辛い。

現代のゴウは、ただのダメ人間というよりクズ男であり、悪い奴にしか見えない。沢田研二さんは一所懸命演じているが、カッコよすぎて淋しさが見えない。志村けんさんだったらペーソスが漂って、人間の持つ哀しさや淋しさが自然に出ただろう。

とはいえ、私の敬愛する山田洋次監督の作品だ。笑って泣けるのは間違いない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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