岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ナチス協力者という国家の罪を暴く実話の映画化

2021年09月22日

ホロコーストの罪人

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【出演】ヤーコブ・オフテブロ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、シルエ・ストルスティン、ピーヤ・ハルヴォルセン、ミカリス・コウトソグイアナキス、カール・マルティン・エッゲスボ
【監督】エイリーク・スヴェンソン

従うこと 傍観者だったこと それを裁けるか?

1942年、第二次世界大戦の始まりの振動が、ヨーロッパの各地で感じ取れるようになった頃のノルウェー。肉屋を営むブラウデ家は、まだ穏やかな日々を暮らしていた。3兄弟のひとりチャールズがボクシングの試合で勝利、少々、ハメを外して帰宅が遅くなるが、そこにはそれを暖かく迎える家族がいた。

ユダヤ人であるブラウデ家は、敬虔なユダヤ教徒でもあるが、チャールズが決めた非ユダヤ人であるサラとの結婚を、両親も周囲の人々も暖かく受け入れる。幸せと希望にあふれた挙式が行われる。

ナチス・ドイツは次第に周辺隣国への侵攻を開始。ノルウェーにも不安が訪れる。ブラウデ家の中でも、ユダヤ人であることと、ノルウェー国民であるという自認がせめぎ合う。親と子の世代の認識の格差が存在した。そして遂に、ナチスのノルウェー侵攻が始まる。

ここのところ、ナチス、ユダヤ人虐殺、ホロコーストといった題材の映画の公開が続いている。繰り返しになるが、決して忘れないための記憶への楔である。映画は様々に視点を変え、歴史を風化させないための検証を試みる。ナチスの残虐行為や、悲惨な運命に翻弄されたユダヤ人たちを、映画は全方位から繰り返し描いてきた。

ドイツによる侵攻を受けた隣国の政府や市民の対応に言及した作品も多く存在する。協力者たちへの糾弾である。『ホロコーストの罪人』は1942年11月、ノルウェー秘密国家警察がナチスの指令のもと行った、ユダヤ人の移送計画を描いている。

身分証明書に押されるユダヤ人を示す "J" の印。やがて、成人男子の収監が始まる。迫る危機感に、国境を越える亡命者は後をたたない。そして、その毒牙は、遂に、全ユダヤ人に及ぶ。ユダヤ人たちはオスロの埠頭に移送される。そこには港に接岸された輸送船 "ドナウ号" が待ち構えていた。それが1日のうちに遂行された事に驚愕する。

焦点は政府管轄下にあった警察組織のいわば役人にあたる。背くことを許されない圧政はどこからからのものだったのか? 市民は傍観するしかなかったのか? ノルウェー政府がこの事実を認め、公式に謝罪したのは70年後の2012年だった。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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