岐阜新聞 映画部

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ジュゼップの生き様を、シュールに描いた魂のアートアニメ

2021年09月16日

ジュゼップ 戦場の画家

©️Les Films d'Ici Méditerranée - France 3 Cinéma - Imagic Telecom - Les Films du Poisson Rouge - Lunanime – Promenons - nous dans les bois - Tchack - Les Fées Spéciales - In Efecto - Le Mémorial du Camp de Rivesaltes - Les Films d'Ici - Upside Films 2020

【監督】オーレル

彼は叫びもわめきもせず、静かに黙々と描き続ける

スペイン内戦は、文学ではヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」やジョージ・オーウェルの「カタロニア讃歌」、映画ではケン・ローチの『大地と自由』など、多くの芸術家が様々な視点に基づいて作品を発表してきた。

本作はフランスで新聞等のイラストを手がけるオーレルが、スペイン内戦で共和国軍の一員として闘った実在の画家ジュゼップ・バルトリに焦点をあて、彼の生き様と憲兵との友情を、シュールに描いた魂のアートアニメである。

不勉強ながらこの映画を観るまでジュゼップという画家は知らなかった。それにもましてこのアニメを観て衝撃をを受けたのは、フランスにも強制収容所があったということ、それもファシズムと闘ってきたスペインからの難民を収容し、彼らを過酷な状態に置いていたことだ。知られざる真実、フランスの負の歴史である。

映画は、彼らの境遇を憐れみ、自国フランスの対応に心を痛め、有刺鉄線越しに彼らと人間として向き合った、元憲兵の目を通して語られる。彼はすっかり老境の域に達しており、孫に当時のことを語って聞かせる。

もう何十年も前の収容所での光景は色の無い世界。モノトーンでスケッチ風に描かれた動画は、それが彼の記憶の中での印象的な出来事だったと、観ている観客に伝わってくる。静止画風シーンが効果的に使われており、さすがイラストレーターでもあるオーレル監督の真骨頂だ。

対照的に孫の視点からの映像は、フルカラーの通常アニメ。このコントラストが映画にメリハリを与えている。

ジュゼップからのメッセージは、叫びもわめきもせず、静かに黙々と描き続けること。希望を捨てず、いつか行方不明の婚約者に再会出来ることだけを夢見て、生き抜くこと。

ディズニーや日本のアニメを見慣れた観客は、いささか面食らうかもしれない。しかしキャラが立ってなくとも、スケッチ風の作画でも、感銘を受けるのは同じ。素晴らしいアニメだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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