岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

マルクスの末娘エリノアの半生を描いたフェミニズム映画

2021年09月13日

ミス・マルクス

©2020 Vivo film/Tarantula

【出演】ロモーラ・ガライ、パトリック・ケネディ、ジョン・ゴードン・シンクレア、フェリシティ・モンタギュー、フィリップ・グレーニング
【監督・脚本】スザンナ・ニッキャレッリ

ブルジョワが唱えた社会主義の本音と建前

1883年3月14日、イギリス・ロンドン。哲学者で思想家、経済学者であったカール・マルクスが亡くなった。64歳だった。

その埋葬の日、参列者を前にスピーチをする女性、エリノア・マルクス。亡き父と関わりのあった人を紹介し謝辞を述べる。親族や身の回りの世話をしてきた家政婦、盟友エンゲルス…立場や身分を隔てることなき、深い哀悼に溢れた弁舌が、厳かな儀式に緊張感を与える。エリノア、この時、28歳。

カール・マルクスは1818年5月5日、プロイセン王国に生まれた。プロイセン王国はドイツの多くと、現在のベルギー、チェコ、デンマーク、リトアニア、ポーランド、ロシアにその領土が及んでいた。生家は、ロスチャイルド家とも血縁のあるユダヤ系の富豪であった。政治的な思想、出版活動により弾圧を受け、45年には国籍を離脱、亡命状態となり、49年にイギリスに拠点を移した。

エリノアは1855年1月16日、マルクスの第6子(4女)として生まれた。3歳でシェイクスピア作品の一文を暗唱するなど、早くから神童の才能を開花させていた。16歳の頃、正式に父の秘書となり、社会主義者の集会や講演会に随行するようになった。

映画では幼い頃の父娘の親密な様子が、短い回想で何回か繰り返される。エリノアの最初の恋は父に承認されることなく、実ることはなかったが、そのエピソードは描かれてはいない。

マルクスの認識は、世界史で学んだ、幾つかのキーワードを繋ぐ浅いものでしかない。ましてや、エリノアのことは何も知らないというのが実情である。

1880年代、演劇は社会主義活動の手段となり、エリノアもそれに加わる。フローベールの「ボヴァリー夫人」の英訳を手がけ、イプセンの戯曲では俳優として出演もしている。「人形の家」の上演シーンで挿入される台詞は、女性解放=フェミニズムの暗示である。この時の共演者が劇作家エイヴリグで、彼とは事実婚の関係になるが、正式な結婚には障害があり、彼女の運命はこの男に弄ばれる。

パンクロックの演出は少々空回り気味だが、小難しい社会主義やジェンダーについて、易しく知る意味は尊い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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