「罪もないのに家族を殺された。あなたならどうする?」を問う映画
2021年09月02日
復讐者たち
© 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE
【出演】アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ、イーシャイ・ゴーラン
【監督・脚本】ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
復讐したい思いと断ち切りたい思いが複雑に交錯する
本作は「あなたが、罪もないのに家族を殺されたと想像してみてくれ。あなたならどうする?」と問われてスタートする。先にドーンとテーマを提示されたら、答えを考えながら観ざるをえない。あまり好きな手法ではないが、600万人の家族と同胞が殺されたユダヤ人からしてみれば、人の身になって一度考えてみろということだ。
そして本作が数多あるナチスものの中で異色なのは、「ユダヤ人対ユダヤ人」の戦いを描いている点でもある。
映画の主人公は、ナチスに想像を絶する酷さで妻子を殺されたマックス(アウグスト・ディール)だ。彼は、その事実を知った当初は深い絶望と喪失感に襲われるが、やがて復讐することが生きる目的となってくる。
最初に参加したのは、ナチス残党を探しては殺す「ユダヤ旅団」だ。命乞いをする彼らを次々と殺していく。ただしルールはあり「ホロコーストに関与した者のみ」「家族の前では殺さない」。
これに対して「(ナチス以外の)ドイツ人も私たちの悲鳴を聴いていただけ」とする過激派集団「ナカム」は、「600万人には600万人を」と、全ドイツ人に無差別テロを敢行しようとする。
その無謀さ・残酷さを恐れた元ユダヤ旅団のミハイルから「内部を探り情報を入手せよ」と密命を受けたマックスは、ナカムへ潜入する。しかしマックスは、ナカムの思想に半ば共感し、次第にその恐ろしい犯罪にのめり込んでいくのだ。
無差別テロは絶対に許されない。とは直ぐに言えるが、なんか心の中がザワザワする。特にヨーロッパのキリスト教徒は、何世紀にも渡ってユダヤ人の迫害に加担していたではないか?その結末がホロコーストに繋がったのではないのか?この後ろめたさが、イスラエルのアラブ諸国への蛮行を黙認してきたのでは?
マックスが「真の復讐とは何か」を悟って映画は終わる。
復讐したい思いと断ち切りたい思いが複雑に交錯する。「真の復讐」を目指すしかない。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。