岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

魅力あふれるショーに圧倒されるライブ映画

2021年09月01日

アメリカン・ユートピア

©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

【出演】デイヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ティム・ケイパー、テンダイ・クンバ、カール・マンスフィールド、マウロ・レフォスコ、ステファン・サンフアン、アンジー・スワン、ボビー・ウーテン・3世
【監督】スパイク・リー

さまよえる現代人に響く穏やかなメッセージ

グレーの揃いのスーツを纏った12人の男女。さほど広くはない舞台には特別な装置も無く、シンプルな空間が存在するだけ。ギターや打楽器やちょっと変わった楽器のようなものを肩から吊るしたり、手にしてはいるが、彼らはその楽器の演奏だけをするのではない。自在に動き回ることを可能にするため楽器からは配線は消え、大地を踏み締めるための手段なのか、裸足でステップを踏む。

『アメリカン・ユートピア』は2019年の秋にブロードウェイで開幕したショーを記録したライブ映画である。

12人のセンターに立ち、MCを務めるのはデイヴィッド・バーン。1952年生まれだから今年で69歳になる。1974年に結成された"パンク" ロックバンド"トーキング・ヘッズ" のボーカル、ギターを担当していた。

『ストップ・メイキング・センス』(1984年)は、同バンドのアルバムタイトルで、1983年12月にロサンゼルスで行われたコンサートを記録したドキュメンタリー映画でもある。監督はのちに『羊たちの沈黙』でアカデミー賞に輝くジョナサン・デミで、日本では85年に公開された。バーンの名前を知ったのはその時のことだが、トーキング・ヘッズのライブ活動はそれが最後となっている。

バーンはその後、『ラスト・エンペラー』(ベルナルド・ベルトリッチ監督/87年/日本公開88年)で、坂本龍一、蘇聡とともに、アカデミー作曲賞を受賞している。

バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に、同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲、計14曲が演奏される。

ミュージシャンやダンサーは様々な国籍を持ち、パントマイムを取り入れた振付は、『ストップ・メイキング・センス』の頃と変わらない、前衛的なパフォーマンスを展開する。それはダイナミックとは遠いものでありながら、圧倒的な感覚でしたたかに琴線に触れてくる。そこにあるメッセージには押し付けがましいさはないのに、意識を揺さぶる力に満ちているのはバーンの真骨頂と言える。監督が怒れるスパイク・リーなのが皮肉が効いていて面白い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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