岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

全く違う世界に生きてきた2人の少年少女の、ヒリヒリするような青春

2021年08月30日

少年の君

© 2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd., Shanghai Alibaba Pictures Co., Ltd., Tianjin Maoyan Weying Media Co., Ltd., Lianray Pictures, Local Entertainment, Yunyan Pictures, Beijing Jin Yi Jia Yi Film Distribution Co., Ltd., Dadi Century (Beijing) Co., Ltd., Zhejiang Hengdian Films Co., Ltd., Fat Kids Production, Goodfellas Pictures Limited. ALL Rights reserved.

【出演】チョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー
【監督】デレク・ツァン

過酷な運命にもてあそばれる。切なくて残酷だ

本作は、古典的なボーイ・ミーツ・ガールを骨格とし、不良少年と真面目少女の恋愛という、あげたら切りがないほどの類似作品をイメージしつつ、それらのどれとも違う、悲惨で厳しく壮絶で切ない青春映画の傑作である。

中国は1990年代より「社会主義市場経済」体制がとられ、今では世界第2位の経済大国となった。しかしその弊害で経済格差・所得格差は広がり、もはや社会主義とは言えなくなってきている。

さらに中国は超学歴社会であり、自分の子女を少しでもレベルの高い重点大学に合格させようと、現代版科挙とも言える「高考」を目指した受験戦争に家族一丸となって取り組んでいる。これに失敗すると、将来裕福な生活を送ることは厳しくなる。

映画は、このような苛烈な競争社会が生み出す社会の歪みの中、全く違う世界に生きてきた2人の少年少女が出会い、魂を交歓し、心を通わせていく。ヒリヒリするような青春は、リリシズムとは一線を画し、圧倒的なリアリズムで我々に迫ってくる。

進学校に通う成績優秀なチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)は、インチキ化粧品を売って生計を立てている母と2人暮らし。貧しさから抜け出したく受験勉強に勤しむが、裕福な少女グループから陰湿ないじめを受けている。

社会からドロップアウトし、オートバイを乗り回す不良少年のシャオベイ(イー・ヤンチェンシー)が、壮絶な喧嘩でぶっ飛ばされているところへ出くわすチェン・ニェン。

孤独な日々を送るこの2人が、必然のように惹かれ合っていくのは、純愛物の王道だ。少年は少女のボディガードとなり、少年のみすぼらしい家で孤独な心を癒し合い、愛を育んでいく。

しかし社会はほのぼのしたラブストーリーなど受け付けてくれない。いじめはエスカレートし、2人は過酷な運命にもてあそばれる。切なくて残酷だ。

リアリティ溢れる演出と2人の好演で、ズシリと重い青春映画の傑作となった。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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