岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

落語家鶴瓶を追った17年間のドキュメンタリー

2021年08月19日

バケモン

©DENNER systems

【出演】笑福亭鶴瓶
【監督】山根真吾

映画館を救う目的に感謝

笑福亭鶴瓶を最初に知ったのは、名古屋の東海ラジオで放送されていた「ミッドナイト東海」だった。

このラジオ番組は1975年の4月に始まっている。深夜のラジオ番組を聴いていたのは、中学、高校生の頃で、その中のパーソナリティのひとりであった。

認識に時差があったかの記憶は定かではないが、ラジオから聴こえる"濁声"と、アフロヘアーにオーバーオール姿の眼鏡の小太りな男の外観は、早くから馴染んでいた。

漫画「Dr.スランプ」の作者・鳥山明は名古屋出身(現・清須市在住)で、「ミッドナイト東海」のリスナーであったことから、鶴瓶の似顔絵をハガキで送ったことを縁に、対談をしたり、イラストを手拭いに使うなどの交流が始まった。鳥山は私よりも少し年長にあたる昭和30年生まれである。

笑福亭鶴瓶は上方落語の重鎮・6代・松鶴の門下だが、同じ関西の芸能事務所の大手松竹芸能に所属している落語家、3代桂春團治からは「金をやるから髪を切れ」と言われ、師匠・松鶴からも最低の弟子と負のお墨付きを頂戴していた。本人曰く、当時は吉本興業所属の桂三枝や笑福亭仁鶴といった若手落語家に比べ、年齢の高い古くさい松竹の落語家のイメージへの反発だった。個人的な認識では落語家・鶴瓶はぴんとこない。

映画『バケモン』は、2020年、コロナ禍、中断していた全国ツアーが小さな舞台から再開されるところからはじまる。

そもそも、このドキュメンタリーの撮影が始まったのは2007年のことで、監督の山根真吾がこの時、鶴瓶が行った全国ツアーで聴いた古典落語の1席 "らくだ" に衝撃を受けたことをきっかけとしている。

落語「らくだ」は上方落語の4代桂文吾が完成させ、大正になってから東京の3代柳家小さんが移植し、人気演目に発展させた。らくだは主人公のあだ名で、役に立たないものを意味する。主人公は登場から既に死人という奇想天外な噺は、難解不落な真打の大ネタとされている。

異人・鶴瓶を追ったドキュメンタリーは難解な噺 "らくだ" と同様、つかみどころのない迷宮に沈む。そもそも "らくだ" が分からなければちょっと辛い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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