岐阜新聞 映画部

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世宗が作ったハングルの成立を、大胆に発想したフィクション映画

2021年08月18日

王の願い ハングルの始まり

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【出演】ソン・ガンホ、パク・ヘイル、チョン・ミソン
【監督・脚本】チョ・チョルヒョン

ハングルの理にかなった生成過程が克明に描かれる

私が地図制作を仕事にしていた頃、横浜の外国人向け観光マップを作ったことがある。そのとき、はじめてハングルに触れた。独特な記号みたいな文字に最初はとまどったが、基本構造を覚えたら実に簡単、すらすらと仕事は進んでいった。

本作は、韓国の1万ウォン札にも描かれる朝鮮王朝第4代国王・世宗(在位1418年~1450年)の最大の功績である訓民正音(ハングル)の成立を、大胆で自由な発想を交えて描いたフィクションである。

世界のほとんどの文字は自然発生的に生まれるが、ハングルが凄いのは、いつ(1443年完成・1446年公布)、誰が(世宗が集賢殿の学者に命じて)、どのようにして作ったか(訓民正音解例に詳細に記載)が全て分かっている点である。

ただし世宗の人となりや学者の出自に関しては、チョ・チョルヒョン監督の独自の解釈で、現代にも通じる物語になっている。

映画は、ハングルの基本となる子音字母14個と母音字母10個の生成過程を克明に描いていく。

子音は、発音時の口の形を模式化して5つの基本字を作り、声の出が激しくなるに従って一画を加える。

母音は、基本的な3つの字があり、点、横棒、縦棒を組み合わせて他の字を作る。

文字の生成過程を史実通りに描けるのはハングルだけであり、実に興味深く面白い。

一方フィクション部分。世宗大王の懐の深さと、糖尿病でもお酒を飲んでしまう人間くささは、ソン・ガンホが演ずればこそだ。嫌味がなく奥行きがある。

そして朝鮮王朝では最下層の僧侶が、ハングルの成立に大きく寄与していたと描いた点。高麗の時代は仏教が国教であったが、朝鮮王朝では儒教・朱子学が取って代わり、仏教は排斥されていた。

監督は、その能力に関係なくレッテルを貼っての排斥・ヘイトの愚かさを念頭においているに違いない。

ちなみに私の名前はハングルで、미타마사츠구。Tシャツ作りたい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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