岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

孤島の灯台守が繰り広げるスリラー

2021年08月10日

ライトハウス

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

【出演】ウィレム・デフォー、ロバート・パティンソン
【監督・脚本】ロバート・エガース

凝りに凝った映像が妖しげな世界に導く

墨汁を垂らしたような暗い水面が泡立つ荒れた暗い海。ヒキガエルの鳴声のようなホーンが響き渡る。岩礁の先に姿を見せるのは優美さすら感じさせるフォルムの白っぽい灯台。頂上部の回転灯が闇を照らす。接岸した小舟からその孤島に降り立つ2人の男がいる。

1890年代のニューイングランドにあるとある孤島が舞台。灯台守としての4週間の箱詰め勤務につくのは、ベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と、初仕事となる若者イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)。

2人の男の間には、はじめから緊張感が漂う。トーマスには上司としてのプライドからか、頭からイーフレイムを押さえつけようとする魂胆がある。主従の関係は仕事の分担にもあらわれる。過酷な肉体労働がイーフレイムに任される。トーマスは灯台の心臓部である光源のある最上部を自分の領域と定め、イーフレイムの立ち入りを禁ずる。

『ライトハウス』は孤島という外界と遮断された閉塞的な空間で、2人の男が繰り広げる謎めいた物語だが、それは次第に狂気を帯びはじめ、恐怖へと変貌していく。

映像は白黒=モノクロで、限られた光源で微妙な陰影を生み出し、怪しげな空間を創造している。加えて、画面サイズは、ほぼ正方形に近い"スタンダード"が採用されている。どこか懐かしいこれにも、切り取られた場の窮屈さを醸し出す効果がある。

監督は本作が長編2作目となるロバート・エガースで、前作『ウィッチ』(2015/日本公開16年)でも見られた、次第に増幅する狂気を恐怖に高める手法は継承されている。

ロバート・パティンソンは、ウィレム・デフォーの攻めの演技を受け止め、訳ありの過去を持つ複雑な役柄を好演している。

謎の増幅による、もやもやとした気持ちは、晴れることなく、グロテスクな奈落へと引き込まれる。鑑賞には覚悟が必要です。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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