岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

肉欲に溺れた究極の恋愛劇

2021年08月02日

シンプルな情熱

©2019L.FP.LesFilmsPelléas–Auvergne-Rhône-AlpesCinéma-Versusproduction

【出演】レティシア・ドッシュ、セルゲイ・ポルーニン、ルー=テモー・シオン、キャロリーヌ・デュセイ、グレゴワール・コラン
【監督】ダニエル・アービッド

ミステリアスな男には毒があります

冒頭、「去年の9月から何もせず、ある男性を待ち続けた」と、エレーヌ(レティシア・ドッシユ)の独白が流れる。仕事をしていても、友だちと映画を観に出かけても、ひとり息子の世話を焼き、日常の中にいようとも、心の片隅にはいつもその男がい続けた。

男との出会いは、あるパーティーの会場だった。年下の既婚の男はロシア大使館に勤めるアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)。

大学で文学を教えるエレーヌ。講義の最中、アレクサンドルから電話がかかってくる。授業もそっちのけで、逢瀬の場へ急ぐエレーヌ。

自宅の庭に車でやって来る。エンジンの音で反応し、玄関でいそいそと迎え入れる。

ホテルの一室で、自宅で、すべてに優先されるのは、互いを求め合う肉体の交わり。

『シンプルな情熱』は、フランスの作家アニー・エルノーのベストセラー小説を原作としている。1991年に発表された小説は、エルノー自身の体験をもとにしたもので、その艶かしい内容は、フランス人女性から絶大な共感の支持を受けた。

恋愛映画としての範疇で言えば、そこには描かれるはずの出会いや駆け引きは省略され、求め合う肉欲のみが強調される。

監督はレバノン出身の女性ダニエル・アービッドで、パリの街並、カルチェラタンの映画館、美術館や公園や書店を、男女が求め合う舞台として美しく切り取って見せる。

恋をする女性の高揚感やその裏側に潜む不安の足音に怯える、細やかな感情の襞も描けている。恋愛のかたちが肉欲に固執する気持ちも理解できるし否定もしないが、個人的には、何か割り切れない気味の悪さを持ち続けることになる。それは終盤、突然、姿を消したアレクサンドルを尚も追い続けるエレーヌの行動を見せられることで思いは嫌悪に変わってしまった。加えて、ラブシーンにあるべきセクシーさが感じられないのが如何ともし難い。あくまでも個人的な趣味が優先すると言い訳しておきますが…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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