岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

外国人労働者たちのある真実の物語

2021年07月27日

海辺の彼女たち

©2020 E.x.N K.K. / ever rolling films

【出演】ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニュー ほか
【監督•脚本•編集】藤元明緒

儚い夢を掴もうとする彼女たちの強い意志が痛い

逃げる…夜の闇に紛れて、荷物を抱えた若い女性3人が、列車を乗り継ぎ、フェリーに乗り込む。その表情に現れる不安と緊迫感が伝わる。

『海辺の彼女たち』は、日本で働く3人のベトナム人女性たちを追った映画である。

3ヶ月前、日本へやって来た彼女たちは、既に疲れ果てている。大きな夢や希望は断念に変わっている。

とある都会から彼女たちがたどり着いたのは、とある港町で、雪混じりの冷たい空気感が過酷な環境を感じさせる。

3人を案内するのは同胞人の若い男で、手慣れた様子から、同じような斡旋を引き受けているという実態が浮かび上がる。

男との会話から、技能実習生、1日16時間の労働、約束の賃金は支払われることなく、諸々の天引きで、彼女たちの手元には、希望した正当な金は残らないことがわかる。

男は彼女たちから逃亡と新しい職場斡旋のための料金と思しき金を受け取る。

現在、日本は世界4位の移民大国だという。例えば、外国人の存在は名古屋駅の周辺を歩いているだけでも感じることができる。かつて、テレホンカード全盛の時代、偽造された違法なカードの売人は、たどたどしい日本語で近づいて来た。爆買い中国人のはるか以前、地下街には団体観光客が交わす異国の言葉が聞こえた。

外国人労働者の受け入れは、日系人から始まった。かつて外国へ夢を求めて旅立った移民たちの子孫、所謂、逆輸入のかたちである。

それは、留学生、技能実習生という、新たに誕生した制度で拡大していった。

コンビニや建物の解体現場で働く外国人は、見慣れた当たり前のものになっている。

揺らぐ手持ちのカメラ、限られた光源が生み出す画像は粗く暗く、まるでドキュメンタリーを思わせる。制度の問題や差別を声高に叫ぶことなく、真実を提示し、彼女たちを見つめるにとどめた終わらない終わりが、重い余韻となる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る