岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

美と残酷を背中合わせにした反戦映画の傑作

2021年07月22日

戦場のメリークリスマス 4K修復版

©大島渚プロダクション

【出演】デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也
【監督・脚本】大島渚

大胆なキャスティングは大島でなければ実現していない

先日、7月17日に閉幕した第74回カンヌ映画祭では、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が、脚本賞(日本映画初)他を受賞し話題となった。カンヌ映画祭は通常5月に開催されていた。83年、高い下馬評のもと出品されたのが大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』だった。結果は無冠に終わった本作が日本で劇場公開されたのは、同じ5月の28日のことであり、この日の記憶は今も鮮明にある。

私事だが、この頃、名古屋駅近く(名駅4丁目)に職場があった。周辺には映画館が集中してあり、現在、ミッドランドスクエアがあるあたりには、毎日ビルと豊田ビルがあって、現・ミッドランドスクエアシネマのようなシネコンではない、独立した劇場が点在していた。

『戦場のメリークリスマス』はそのひとつ、グランド劇場(豊田ビル内)で公開された。
1942年の太平洋戦争の最中、日本の統治下にあったジャワ島レバクセンパタにあった日本軍捕虜収容所が舞台。

物語の冒頭、朝鮮人軍属がオランダ人捕虜に対して犯した罪の裁きが描かれる。ハイテンションに怒鳴り散らす軍人の姿は、それまでの軍人の定形に見えるが、通訳を任されたイギリス人捕虜のロレンス中尉(トム・コンティ)と事件処理にあたった軍曹ハラ(ビートたけし)のやりとりに、暴力的で粗暴な支配関係の奥に微かな光を忍ばせる。

そして、もうひとつ、ハラの上官である陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)と、捕虜として捕らえられた陸軍大佐セリアズ(デヴィッド・ボウイ)の"交流"が描かれる。

殺伐とした戦場の異様な緊張感のもと、日本軍人の根底にある"武士道精神"を強調し、それが崇高なる美によって脆くも壊れる様を提示する試み。強い反戦の意思はまるで葬送の儀式のように見え、胃の腑に堪える。

ただ、大島の同性愛的な表現は様式にとらわれ、あるべき妖艶さに欠けることを指摘しなければならない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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