政治や経済は平等でも、宗教や伝統行事は男女差別が許されるのか?
2021年06月30日
ペトルーニャに祝福を
©Sisters and Brother Mitevski Production, Entre Chien et Loup, Vertigo.Spiritus Movens Production, DueuxiemeLigne Films, EZ Films-2019 All rights reserved
【出演】ゾリツァ・ヌシェバ、ラビナ・ミテフスカ
【監督】テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ
何故ダメなのか説明できないルールなんて、くそくらえ
本作の舞台は、バルカン半島にある小国・北マケドニアである。旧ユーゴスラビアに所属した共和国で、1991年マケドニアとして独立、その後隣国ギリシャの横やりで2019年に北マケドニアと改名させられた気の毒な国である。
主要な産業は、農業・繊維・鉱業。共産主義時代の功績である政治・経済での平等の精神は、基本的に受け継がれている。
そんな弱小国の片田舎に生まれたペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェヴァ)は、「大学は出たけれど」、まともな職に就けていない32歳の健康美人だ。
片田舎の女性でも大学進学できたのは共産主義のおかげだろう。一方で、ユーゴ時代にソ連型計画経済を否定し自主管理経済で発展を試みたものの、富は北部に集まって南部は産業が育たず、経済的に遅れたまま放り出されてしまった。よって女性が働こうにも低賃金・単純作業しか無いのが実態だ。
ペトル―ニャは、恩着せがましくて女性差別主義の当事者のような母に紹介され、縫製工場で面接を受ける。しかし散々バカにされた上セクハラまでされて憤慨した彼女は、工場を後にする。
帰路たまたま遭遇した東方正教会の神現祭の最大の呼び物、「司祭が川に投げ入れた十字架を拾った者は1年間幸福に過ごせる」という女人禁制の行事で、目の前に流れてきた十字架を普通に拾ってしまう。
そこからの上や下への大騒ぎが、東欧圏の映画特有のアイロニーとユーモアで、観客を笑わせながら問題提起をしていく。
政治や経済分野は、多くの国で実態はともかく男女差別を法律で禁止している。しかし信仰の自由がある宗教や伝統行事まで縛られるのか?
日本でも世界遺産に登録された神宿る島「沖ノ島」は、今も女人禁制だ。
しかしペトルーニャは、「何故ダメなのか説明できないルールなんて、くそくらえ」とばかりに最後まで闘いぬく。これも革命の精神を受け継いでいるようだ。
ペトルーニャ、頑張れ!
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。