岐阜新聞 映画部

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3家族の物語を混乱なく描いていく、瀬々敬久監督会心の一作

2021年06月24日

明日の食卓

©2021「明日の食卓」製作委員会

【出演】菅野美穂、高畑充希、尾野真千子、柴崎楓雅、外川燎、阿久津慶人 / 和田聰宏、大東駿介、山口紗弥加、山田真歩、水崎綾女、藤原季節、 真行寺君枝 / 渡辺真起子、菅田俊、烏丸せつこ
【監督】瀬々敬久

専業主婦・共働き・シングルマザー、飛行機雲は子育ての母の連帯だ

本作は、石橋“ゆう”という小学5年生の息子を持った、神奈川・静岡・大阪に住む“3家族”のヒリヒリするような母子の物語である。

世界経済フォーラム(WEF)が今年3月に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等度合い)」では、日本は156カ国中120位。相変わらず先進国の中で最低水準である。

これは政治・経済・教育などの指数だが、子育てにおいても明らかに女性に偏っており、例えば育休の取得率は、女性83%に対して男性は7.48%に過ぎない(2019調)。

『明日の食卓』の3家族は、所得階層においては上・中・下、お母さんの立場においては、専業主婦(尾野真千子)・共働き(菅野美穂)・シングルマザー(高畑充希)と、類型化されており、何れかに共感しやすいように作られている。

一方男親は、教育に無関心・過干渉、離婚による子育てからの逸脱であり、全員無責任だ。

この3家族を直接交わらせることなく、並行して物語を進行しつつ、混乱なく見せていく手腕は、さすがストーリーテラーの名手・瀬々敬久監督のなせる技だ。

母と息子の関係は、三者三葉だ。基本的に父親は不在同様なので、すべては母の手にかかっている。子を想う母の気持ちは痛いほどよくわかるのだが、子どもにとってみれば、母との関係が大人社会への架け橋。母をコントロールしようとしたり、注意をむけようと弟に暴力をふるったり、お母さんの頑張る姿が逆に子どもにプレッシャーになったりする。

お互いの想いがすれ違い、イライラしたりよそよそしくなったりする。言葉によるコミュニケーションが上手くいかなくなって、思わずカッと手が出てしまう。

そういったプロセスを、瀬々監督は丹念に追っていく。

石橋“ゆう”という同姓同名の家族が繋がっているのは、菅野が書くブログを通じてのみ。ラストみんなで見上げる飛行機雲は、連帯を表しているのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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