岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

2021年オンラインイタリア映画祭の秀作

2021年06月03日

靴ひも

【監督】ダニエーレ・ルケッティ
【出演】アルバ・ロルヴァケル、ルイージ・ロ・カーショ、ラウラ・モランテ

原作はイタリアのベストセラー小説

イタリアの作家ドメニコ・スタルノーネが2014年に発表した小説「靴ひも」の映画化。邦訳は2019年新潮社よりクレストブックス・シリーズで出版されている。原作は3部構成で1部が妻から別れた夫への書簡形式、2部が夫の回想、3部が成人した子供たちの現在の騒動から成っている。映画ではこの形式は踏襲せず、回想シーンを織り交ぜ1本の映画としている。

見どころは豪華な俳優陣。夫役は「輝ける青春」(2003年)のルイージ・ロ・カーショ。妻は今やイタリアのトップ女優となったアルバ・ロルヴァケル、その晩年を演じるのがラウラ・モランテという黄金リレー。ロルヴァケルが老いるとモランテというのも似てない感じはするものの、映画ならではの配役。原作ではいなくなった飼い猫の警察署での捜索願いで、妻は「身代金目当ての誘拐だったら」という爆笑シーンがあるが、映画ではカットされている。

全般的にシリアスなトーンで纏められているが、映画化に当たり原作ものの脚色は的を絞る必要があったのだろう。子供たちの騒動もその後の一悶着を予感させるところで終わるが、そこは原作通り。読み手の年代や性別、結婚観などの違いで原作の受け止め方はそれぞれ異なるだろう。映画化も大筋原作どおりなので、この一組の夫婦の40年に渡る喜怒哀楽を誰しも自分に置き換えて考えてしまうだろう。そんな力強さと説得力を持つ秀作である。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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