岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

在宅医療の現場にあるいのちの物語

2021年05月28日

いのちの停車場

©2021「いのちの停車場」製作委員会

【出演】吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行、みなみらんぼう、小池栄子、泉谷しげる、松金よね子、石田ゆり子、柳葉敏郎、森口瑤子、南野陽子、佐々木みゆ、田中泯
【監督】成島出

吉永小百合が挑んだ初の医師役

冒頭、トンネル事故が発生。暗転後、病院の緊急外来の現場が現れる。重傷を負った人たちが横たわるベッドの間を転々と駆け回る医師がいる。白石咲和子(吉永小百合)は長年、救命救急医として働いてきた。的確な指示を出し、迅速な処置に動き、緊急時にも動揺を見せることはない。

そこに病院近くで自動車事故に遭遇した少女が、病院で事務員を勤める野呂(松坂桃李)によって処置室に運び込まれてくる。茫然とする野呂に咲和子は喝を入れ、少女の容態を確認するが、処置中の患者の急変に対応するため、その場を離れなければならない…苦しむ少女…困惑する野呂…。

野呂はこの時、咄嗟に行った無資格の医療行為の責任を問われる。それをかばうかたちで咲和子は病院を辞め、故郷である金沢に帰ることになる。馴染みのバス停。待っていたのは笑みを浮かべた父・達郎(田中泯)だった。

咲和子が選んだ新たな職場は、"まほろば診療所"。そこで行われている医療は、それまでの経験だけては立ちゆかない別のものだった。

『いのちの停車場』は、在宅医療という、病院のシステムからは離れた現場を描いた映画である。そこには様々な患者が登場する。

勿論、そこには治すという医療があり、それを支える家族がいる。多くは、看取るという医療であり、患者に、生きるという様に、寄り添うことが求められる。

エピソードは患者ごとに区切られている。家で終わりを迎えたい妻を看護する夫。自分らしさを貫く芸妓。最新の医療=治験に挑む若き経営者や女流棋士。小児がんと闘う少女。それに立ち向かう咲和子の姿は揺らぐことなく真摯である。

ただ、大きな決断が要求される父との対峙に、安楽死という重いテーマを提示したため、物語としての流れが変調を起すことが惜しまれる。ラストシーンで観客に託される余韻も、些か、唐突に思えてしまう。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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