岐阜新聞 映画部

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水の精霊神話をモチーフにした悲恋の物語

2021年05月14日

水を抱く女

© SCHRAMM FILM/LES FILMS DU LOSANGE/ZDF/ARTE/ARTE France Cinéma 2020

【出演】パウラ・ベーア、フランツ・ロゴフスキ、マリアム・ザリー、ヤコブ・マッチェンツ 
【監督・脚本】クリスティアン・ペッツォルト

ウィンディーネの官能的な視線は水を沸騰させる?

ベルリン、とあるカフェ。痴話喧嘩、恋人から別れ話を切り出された女性が激しく動揺する姿。時間に追われ仕事場である博物館で、来客者向けのガイドをこなすが半ばうわの空。希望を託して、彼が待つであろうカフェに向かうが、そこには姿はなく、店内を彷徨う内、見知らぬ男に声をかけられる。上手く対応できないでいると、突然、ふたりの目の前にあった大きな水槽が割れ、大量の水がふたりを襲う。

その後、ずぶ濡れになったウィンディーネ(パウラ・ベーア)と、潜水夫のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)は、すぐに恋に落ちる。

『水を抱く女』は、この違和感漂う不思議なオープニングから、繰り返し"水"が象徴的なイメージとして登場する。

ヒロインの名前、ウィンディーネはヨーロッパでは四大精霊のうちの水を司る精霊のことで、美しい女性の姿をした精霊と、人間との悲恋の物語は神話として広く伝わっている。

ドイツ人作家フリードリッヒ・フーケは1811年に、ウィンディーネと騎士フルトブラントの悲恋の物語を小説として発表している。

この小説を原作とした戯曲『オンディーヌ』は、1939年、フランスのジャン・ジロドゥにより書かれ、日本では劇団四季が上演している。

オンディーヌはフランス語の読みで、英語ではアンディーン、イタリア語ではオンディーナと読む。その語源は"波"を意味する。

ウィンディーネとクリストフは逢瀬を繰り返す。休日にはクリストフが潜水夫として働く貯水池のある郊外へ。また、ある日はベルリンのウィンディーネの暮らすアレクサンダー広場を望むアパートで。互いに求め合うふたりだったが、ふとした時に感じた違和感は、次第にその波紋を広げていく。

神話もモチーフにした物語は、美しく幻想的な映像で魅力的だが、リアルから乖離する展開の飛躍には少し戸惑う。そう言えば、現在、このモチーフを使ったTVドラマが放映中…マーメイド=人魚と精霊は違うのかな?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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