岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

大切な人の不在を乗り越える再生の物語

2021年05月11日

FUNNY BUNNY

©2021「FUNNY BUNNY」製作委員会

【出演】中川大志、岡山天音、関めぐみ、森田想、レイニ、ゆうたろう/田中俊介、佐野弘樹、山中聡、落合モトキ、角田晃広、菅原大吉
【監督・脚本・原作】飯塚健

要注意!細かいことに拘ると乗り遅れること必至

不機嫌な運転手のタクシーに乗った剣持聡(中川大志)と漆原聡(岡山天音)。乱暴な運転に翻弄されつつ、信号待ちの停車で剣持はとうとうと語りだす。説得力ある弁舌か?運転手は諭される。

その1時間前。同じ"聡"の名を持つ、ふたりがたむろする中華料理店。ハイテンションの剣持が捲し立てるように自論を演説する。半ば呆れて傍観者を装う漆原だったが、毎回同様のことなのか?剣持のペースに飲み込まれていく。

バニー=ウサギの着ぐるみの頭を被ったふたりは、閉館間際の図書館に降り立つ。

説明もないままに始まる、この強引なオープニングに戸惑い、剣持の大仰な台詞にも違和感を感じる。

映画『FUNNY BUNNY ファニーバニー』は、監督、脚本の飯塚健が、2012年に演出を手がけた舞台劇「FUNNY BUNNY 鳥獣と寂莫の空』の戯曲と、小説版「FUNNY BUNNY」を原作に映画化したものである。

ストーリーは大きくふたつに分かれており、それぞれのエピソードに回想が絡む構成となっていて、映画化への工夫が感じられるが、舞台劇らしい、構え気味の会話劇と展開の強引さに、引っかかる部分があることは否めない。

ふたつのエピソードは、いずれも"死"に関わる重いテーマを含んでいる。それを確信犯的にすかす、とぼけたハイテンションなストーリーは、映画では辛いものとなってしまう。

ふたつの物語に共通するのは、大切な人の"不在"である。

剣持の高校時代の後悔の感情を内包したままの前半は、"いじめ"に対する罪と罰に言及し、心を揺さぶられはする。しかし、再び強引に始まる後半は、音楽という接点のみで、ふたりの聡はあくまで傍観で、人間関係の辻褄合わせだけなのが、一貫性の説得力を欠き、些か締まりがないことが惜しまれる。

演技のアンサンブルはよく練られ、剣持役の中川大志のカリスマ性には光るものがある。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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