岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

絶滅したジャンルを現代に蘇らせた傑作

2021年05月12日

まともじゃないのは君も一緒

©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

【出演】成田凌、清原果耶、山谷花純、倉悠貴、大谷麻衣、泉里香、小泉孝太郎
【監督】前田弘二

主人公2人が愛おしく、私の気持ちはいつも彼らの側にあった

この映画を語るうえで外せないワードがある。スクリューボールコメディとプログラムピクチャー。どちらも映画のジャンルを表す言葉だ。

前者はあり得ない組み合わせの男女が様々な事件を巻き起こすラブコメディのこと。突飛なキャラクター、テンポの良いマシンガントーク、全編を彩るロマンチシズムが特徴だ。代表例にフランク・キャプラ「或る夜の出来事」、ハワード・ホークス「赤ちゃん教育」などがある。日本でも市川崑「結婚行進曲」、中平康「あした晴れるか」、増村保造「最高殊勲夫人」といった傑作がある。

後者は1950年代~1980年代にかけて映画各社で機能していた映画量産体制の下で製作された映画全般を指す。様々な監督の映画やスター映画がローテーションで製作されていた。主な特徴はどれも90分前後の娯楽映画であること。

そして本作「まともじゃないのは君も一緒」は予備校講師と生徒の2人がマシンガントークを繰り広げながら様々な事件を巻き起こす98分のラブコメディ。こう書けばこの映画が先に挙げたジャンルの要素に当てはまることが分かってもらえるだろう。そう、絶滅してしまったジャンルが見事に復活を遂げたのだ。

本作の魅力はなんといってもキャラクターの面白さにある。“普通になりたい”と願う予備校講師の大野(成田凌)と“普通を教えてあげる”という教え子の香住(清原果耶)。純粋で思ったことを真っ直ぐに口にする大野と、口が悪く容赦ないが幼さ残る香住のやりとりはまさに漫才のよう。ピントのズレた会話が当たり前のように流れていく面白さにクスクス笑ってしまう。そしてそんな2人が愛おしく、私の気持ちはいつも彼らの側にあった。

そう思わされるのは前田弘二監督の彼らを見つめる視線がとても温かいからに他ならない。不器用で悩んで迷って戸惑って。そんな欠点も含めてすべてを包み込んでくれる優しさがとても心地良い。そしてこの温かさを支える脚本は「婚前特急」でもコンビを組んだ高田亮と前田弘二によるもの。加えて背後の人物の動きまで計算されつくした映像、成田凌と清原果耶の凄まじい演技力も圧倒的で素晴らしい。

とまぁここまでいろいろ書いてきたが最後に一言。“私はこの映画が大好きです”

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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