岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

豊かな自然と細やかな人情、ルナナの人たちにみる幸福とは何か?

2021年05月11日

ブータン 山の教室

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【出演】シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・へンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム
【監督・脚本】パオ・チョニン・ドルジ

足ることによる幸せではなく、当たり前の生活を送れる幸せ

ブータンは、国民総生産量(GNP)より国民総幸福量(GNH)が重要だという独自の指標を打ち出している立憲君主国だ。仏教的価値観を背景に、伝統的な社会・文化や民意、環境にも配慮した「国民の幸福」の実現を目指す考え方で、医療費と教育費は無料、たばこの持ち込みや高山への登山は禁止、公的な場所での民族衣装着用の義務付けなどが例に上げられる。

国連には加盟しているが、非同盟中立が外交の基本であり、米国・中国・ロシアなどとの外交関係はない。一方でジグミ・ケサル国王が結婚後の最初の外遊に日本を訪れるなど親日国である。

ヒマラヤ奥地の神秘的な王国の首都ティンプーに住む青年・ウゲン(シェラップ・ドルジ)がこの映画の主人公だ。一旦就いた教職を続ける気はなく、5年の義務期間が過ぎたらオーストラリアへ行って歌手になることを夢見ている。片時もスマホを離さない今どきの青年である。

そんな彼に赴任が告げられた地は、標高4,800メートルに位置するルナナの村の学校だ。ヒマラヤ山脈の山道を、徒歩で8日間かけて到着した先は、電気も電話もトイレットペーパーもない、都会では想像もつかなかった「不自由な」村だった。

Google Earthでルナナの村を探してみたが、白い氷河のすぐそばで、信じられないほどの山の中だ。

「教師をやる気がない」と告げるウゲンの言葉も受け入れ、決して批判しない村の人々。お互いの存在を認め合い、ヤクと共存する暮らし。何もないというのは「便利な暮らしをするための道具がない」のであり、そこには豊かな自然や細やかな人情があるのだ。

ウゲンはルナナの村に腰を落ち着けることで、「足ることによる幸せではなく、当たり前の生活を送れる幸せ」を知る。

実はルナナの村の人の中にもコロナの陽性者が出たらしい。こんな辺境まで届くとは恐ろしいウィルスである。今は、村の人々の健康と幸福を祈るばかりだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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