岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人生を豊かにしてくれる女の友情を描く秀作

2021年04月26日

あのこは貴族

©山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会

【出演】門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ、佐戸井けん太、篠原ゆき子、石橋けい、山中崇、高橋ひとみ、津嘉山正種、銀粉蝶
【監督・脚本】岨手由貴子

境遇の違いが対立を生まず他者への理解に向かう

山内マリコの同名小説の映画化で、監督は「グッド・ストライプス」で新藤兼人賞を受賞した岨手由貴子。脚本も監督自らが書いている。

東京の上流階級のお嬢さんと地方出身で名門大学も中退せざる得ない貧困家庭の娘を描いた女性映画の秀作で、前者のお嬢さん(華子)を門脇麦が、後者の娘(美紀)を水原希子がそれぞれ好演している。特に水原希子の自然で生き生きとした演技が素晴らしい。

どんな家庭環境に生まれても、それぞれに異なった悩みを抱え、皆それを乗り越えて新しい一歩を踏み出し、生きていかなければならないというメッセージが心に響く。そして、境遇の違いが対立を生むのではなく、相手を理解し自身の視野を広げる方向に向かう関係が素敵だ。

さらに、華子と逸子(石橋静河)、美紀と里英(山下リオ)の友情を描いたエピソードが微笑ましく、男性との恋より女同士の友情の方が、人生を豊かにしてくれるという確信が説得力を持って描かれている。その素晴らしい関係性は、男性から見ても羨ましいほどだ。昔大好きだった山田太一のドラマ「想い出づくり」などを思い出してしまった。

またひとり才能豊かな女性監督が現れたことを喜びたい。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

観てみたい

100%
  • 観たい! (11)
  • 検討する (0)

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

ページトップへ戻る