岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

今泉力哉監督作品《その3》

2021年04月22日

あの頃。

©2020『あの頃。』製作委員会

【出演】松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人/コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希/山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)/西田尚美
【監督】今泉力哉

雷でも石ころでも、その時だけでも一生でも

今泉力哉監督作品は昨年のはじめ、連続して公開された。『mellow メロウ』と『his』がそれで、いずれもその完成度は高く、その後も、公開予定作があったことから、2020年は"今泉力哉の年"になるはずだった。

岐阜新聞映画部のレビューでも、先行する2作品を"今泉力哉監督作品その1"、"その2"とナンバリングして、書き継ぐ予定だった。

それはコロナ禍の影響で公開延期となり叶わなくなったが…そして、1年、待ちに待った新作2本が連続公開されている。

《今泉力哉監督作品 その3『あの頃。』》 ベーシストとしてバンドで活動している劔樹人(松坂桃李)は、仲間からもその演奏ぶりににクレームをつけられ、それに反論もできない程に、鬱屈した日々を過ごしていた。ある日、手に取った1枚のDVDを観た瞬間、雷に打たれた様な衝撃に襲われる。

若さ故の特権と限定はしたくないが、感性という見えない網に、ふとしたきっかけで捕らえられた何かが、人の生き方を変える時がある。些か物言いが、大袈裟になってしまったが、それが何であるのかは個人差があるし、予測不可能なものだから、雷に打たれたなどという衝撃的な出来事ではなく、案外、石ころにつまづく程度のものかも知れない。

劔が観たのは松浦亜弥が出演する「ハロー!プロジェクト」のPVだった。ここでは"石ころにつまづく"などというネガティブな表現は相応しくない。劔はまさしく心酔没頭する。そして、同胞を得ることで、スカスカだった生活は一変、生きがいとなる。

アイドルの"オシ"を得た面々=仲間は、強烈な個性を放つ。普通からは浮いた存在であることもなんのその、充実の日々は続くのだが…。 『あの頃。』は、誰にも身に覚えのある"ある時"を甦らせる青春映画である。情熱的な謳歌と時の経過がもたらす寂寥感を描く苦心が見える。 個性派揃いの仲間たちの中では、コズミンを演じた仲野大賀の存在感が際立つ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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