岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

息子を失った母親の自分らしさ発見の物語

2021年04月13日

ステージ・マザー

© 2019 Stage Mother, LLC All Rights Reserved.

【出演】ジャッキー・ウィーヴァ―、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー
【監督】トム・フィッツジェラルド

突き放してしまった過去を後悔に終わらせないために立ちあがるママ

 テキサスの田舎で夫と暮らすメイベリン(ジャッキー・ウィーヴァー)は、教会のコーラス隊でリーダーを任されたりして、それなりの老後を満喫していた。

   ある日、訳ありで疎遠になっていた息子のリッキーの訃報を受ける。悲しみに取り乱すメイベリンだったが、息子のため、反対する夫を振り切るように、単身、サンフランシスコへ向かうことになる。

   教会では厳かに葬儀が執り行われているはずだったが…。些か、場違いに着飾った参列者に囲まれ、呆然とあたりを見回すメイベリンに追い討ちをかけるように、スピーチに立ったあきらかな女装者たちは、歌とダンスで教会をステージに変えてしまう。

   リッキーはドラッグクイーンのショーを売り物にしたゲイバーを経営していた。パートナーで共同経営者でもあるネイサン(エイドリアン・グレニアー)は、葬儀にやって来たメイベリンを息子を理解していない冷たい母親だと認識して、拒絶の意思を示すのだが、店の経営権は遺族としてのメイベリンにあることを告げる。しかし、バーの経営は破綻寸前の危機にあった。

   欧米では、ドラッグクイーンをはじめとした、所謂、LGBTに対する理解は進んでいると思われているが、それには地域格差が存在する。アメリカでも都市に比べれば、田舎街では歴然とした差別がある。メイベリンとリッキーの親子にも偏見に根ざした気持ちの行違いがあった。それには保守的な考え方に加えて、敬虔なキリスト教信者であることも影響していた。

   メイベリンはリッキーの知らないでいた、目を逸らしてきた、真実の一面を彼の身近に生きている友人たちにふれあうことで次第に理解していく。

   息子が命を落とす原因となった薬物に依存する店のダンサーを救い、自らも恋に落ちたり、メイベリンの店再生への決意は、自分らしさの発見へとシンクロする。気がつけば、優しい気持ちに満たされ、後味爽やかな映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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