岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

大手出版社の内情と権力闘争を描く痛快作

2021年04月06日

騙し絵の牙

©2020「騙し絵の牙」製作委員会

【出演】大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ/斎藤工、中村倫也、坪倉由幸、和田聰宏、石橋けい、森優作、後藤剛範、中野英樹、赤間麻里子、山本學、佐野史郎、リリー・フランキー 、塚本晋也/國村隼、木村佳乃、小林聡美/佐藤浩市
【監督】吉田大八

正直、滅茶苦茶面白い

 吉田大八監督の「騙し絵の牙」は、大手出版社を舞台にした権力闘争を描いている。権力闘争の話は、どの業界が舞台でも面白いものだが、この映画はストーリーがとても良くできている。先の読めない展開の妙が肝の作品なので詳しく書けないのが残念だ。

 しかし、この作品に描かれているのは大手出版社の内部抗争だけではない。今や斜陽産業となりつつある出版業界の生き残りをかけた試行錯誤や、休刊のピンチに立たされた雑誌をリニューアルするための編集会議、そして窮地に立たされどんどん数が減っている町の小さな本屋さんの存在意義など盛りだくさん。それらが、欲張りすぎと感じさせないくらい見事に噛み合い、ドラマに豊かさをもたらしているのが素晴らしい。

 「罪の声」の原作者である塩田武志が、大泉洋をモデルに書いた同名小説の映画化だけに、彼の魅力が遺憾なく発揮されている。ヒロインの新人編集者を演じる松岡茉優も適役。他のキャスティングも適材適所でドラマに厚みを出している。

 吉田大八監督は「桐島、部活やめるってよ」に顕著なように、大勢の登場人物を捌く技術は一流。しかも、ユーモラスにして辛辣な語り口で、テンポも軽快。彼のフィルモグラフィーの中でも最良の作品のひとつと言ってよかろう。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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