岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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運転手と調香師が起こす奇跡の調合

2021年03月23日

パリの調香師 しあわせの香りを探して

© LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA

【出演】エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル、セルジ・ロペス
【監督・脚本】グレゴリー・マーニュ

何故か運転手と雇主のお話にはほっこりさせられる

 人や荷物を運ぶ車の運転手として働くギヨーム(グレゴリー・モンテル)は離婚調停中。ひとり娘の親権を維持して、娘との同居を叶えるためには、広いアパートへの転居が必要だった。

 そんな時、交通違反の点数が重なり、運転手としての職を失いかける。それでも上司に懇願し何とか次の運転手シフトを得るのだが…。

 ギヨームは運転手として務めるヴァルベルグ氏の高級アパートメントへ向かう。そこにいたのは凛とした佇まいのアンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)だった。彼女の細々とした指示に従い、荷物を車に運びこむ。車内ではいきなり吸っている煙草の銘柄を言い当てられ、禁煙を告げられたうえ、車窓から煙草を捨てられてしまう。ホテルに到着すると、洗剤の匂いが気になるからと、持参のシーツへの交換を強要される。それは運転業務外だと断ろうとするが、経費の誤魔化しを報告すると脅される。

 翌日向かった仕事先は山中にある洞窟だった。アンヌの仕事は、その洞窟内部を観光洞窟として復元するため、匂いを再現するというものだった。

 仕事を終え、アパートへ送り届けたその時、アンヌはひったくりにバッグを奪われるが、ギヨームは犯人に飛びかかりそれを阻止する。しかし、アンヌの口からは「飛びかかるなんてどうかしている」という非難だった。それにブチ切れだギヨームは、「あなたには"お願いします”も”ありがとうも"もない、命令だけだ!」と言い捨て、その場を去る。

 折角の職を失ったと意気消沈していたギヨームに、上司が告げたのは、アンヌからの次の仕事のご指名だった。

 些か長くなったが、この導入部分が素晴らしい。ギヨーム、アンヌのそれぞれの置かれた立場や、性格や心理をまんべんなく詰め込んでいる。この後の展開もここでの提示を紐解いて行くという優しい語り口。

 調香師というデリケートな職業と、男女の関係の繊細な機微をシンクロさせた素敵な映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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