岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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観るに損はなし、大いに語り合いたい映画だ

2021年03月12日

藁にもすがる獣たち

© 2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. ©曽根圭介/講談社

【出演】チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ぺ・ソンウ
【監督】キム・ヨンフン

借金まみれで追い詰められた、3人の奴ら!

 本作を観て、バラバラな時系列が後半になって集約していく構成は、タランティーノの『パルプ・フィクション』(1994)を、,次から次へと主導権が移っていくところは、ガイ・リッチーの『ロック、ストック&スモーキング・バレルズ』(1998)を。この2つの映画を連想したマニアは少なくないだろう。

 『藁にもすがる獣たち』は、借金まみれで追い詰められた3人の奴らが、目の前の大金を手に入れようと、獣のように行動していくクライムサスペンスだ。

 ヴィトンのバッグに入っていた客の忘れ物の10億ウォンをネコババする、サウナ従業員ジュンマン(ペ・ソンウ)、騙されて借金を背負い夫に暴力をふるわれている、キャバクラ嬢ミラン(シン・ヒョンビン)、連帯保証人になっていた恋人に逃げられた、出入国管理局勤務テヨン(チョン・ウソン)。

 3つの話が並行して進んでいくが、ここに第4の人物が現れてストーリー上のキーパーソンになっていく。結末は如何に?という物語。

 評判がいいのを知ってから観たが、私にはヴィトンのバックだけをカメラで追っていく思わせぶりな冒頭のシーンから嫌な予感がし、リアリティの欠片もないご都合主義の展開には付いて行けず、特に後半からの屁理屈だらけの伏線の回収には辟易しすぎて気持ちが悪くなってきた。

 動機付けは安っぽいし、人物造詣は浅いままで説得力に乏しく、それでいてストーリーは無駄なディテールにこだわっている。でもってそのディテールも杜撰極まりないときた。話がやたら長いけど結論がない、形容詞だらけで確信を言わない、下手な政治家の話みたいな展開だ。

 ツッコミどころに暇はないが、それも途中でうんざりしてきた。これなら火曜サスペンスの方がずっといい。

 とまあ、私にとっては全く受け付けない作品であった。が、ここまで言えるのも、映画に力があってこそ。観るに損はなし、大いに語り合いたい映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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