岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

涙ぐましい努力をする、未だ現役の親父の話

2021年03月10日

43年後のアイ・ラヴ・ユー

© 2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved.

【出演】ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル、セレナ・ケネディ、シエンナ・ギロリー、ブライアン・コックス、ベロニカ・フォルケ
【監督・脚本】マーティン・ロセテ

シェイクスピアにガーシュイン。実にハイソな映画だ

 本作の原題は“Remember Me”。『43年後のアイ・ラヴ・ユー』という絶妙な邦題は、シニア世代の男性にとって、40数年前の学生時代を甘酸っぱく思い起こして青いレモンの味がする、ズバリ直撃のタイトルである。

 主人公の元演劇評論家クロードを演ずるのは、御年84歳のブルース・ダーン。映画上の設定は70歳。全く違和感のない若さだ。対してアルツハイマー症で施設で過ごす元舞台女優リリィを演ずるのは、御年71歳のロリーヌ・シロル。気品とオーラが衰えることはない。

 43年前、駆け出しの演劇評論家だったクロードは、大スターだったリリィに恋をする。しかし、夫のいる彼女との釣り合わない恋が上手くいく筈ももない。

 私事で恐縮だが、私の幼馴染のマドンナたちとは、厄年会や還暦会、私が幹事を務める小学校のクラス会で遭遇するが、「相変わらず美人だねえ」というのが精一杯。“あわよくば”と心の片隅に思わぬでもないが、そこは分別のある大人。映画に託してみるしかないのだ。

 アルツハイマーのふりをして、無理矢理リリィの施設に入居するクロード。「そんな馬鹿な」とうがってみるよりも、「涙ぐましい努力をする未だ現役の親父」とみれば、少々のご都合主義は関係ない。首尾は如何に?と面白おかしく楽しめばいいのだ。

 映画を観ての何よりの御馳走は、シェイクスピアとガーシュインだ。リリィの記憶を呼び起こすために利用する2人の思い出。

 総合芸術と言われる映画であるが、演劇やクラシックにも翼を広げた映画マニアの方も多いと思う。かくいう私もそうで、真田広之の「ハムレット」や、名フィルのガーシュインは今でも脳裏に浮かぶ。

 本作が「冬物語」をベースにし、「ハムレット」の名セリフが鍵を握り、“Embraceable You”が記憶を呼び起こす手助けをするなど、ファンにはたまらない設定となっている。

 実にハイソな映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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