岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

「新聞記者」に匹敵する社会派娯楽作の傑作

2021年03月03日

ヤクザと家族 The Family

©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

【出演】綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補/寺島しのぶ、舘ひろし
【監督・脚本】藤井道人

裏社会の変遷と不寛容な現代社会を描く

 日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「新聞記者」の河村光庸プロデューサーと藤井道人監督が、再度タッグを組んだ「ヤクザと家族 The Family」は現代日本社会に一石を投じる社会派エンタテインメントの傑作。

 河村プロデューサーは、「あゝ、荒野」、「愛しのアイリーン」、「MOTHER マザー」等の傑作を製作してきた注目の映画製作者。一方の藤井監督は、「光と血」、「青の帰り道」、「デイアンドナイト」等の素晴らしい映画を撮り、現在最も期待される日本の若手映画作家のひとり。

 まず何より、藤井監督自らが書いたオリジナル脚本が出色の出来栄え。1999年、2005年、2019年の三部構成で、主人公(綾野剛)がどのようにしてヤクザの組の一員となり、なぜ懲役刑に服し、出所後どのような末路を迎えるに至るかを描くことで、日本の裏社会の変遷と現代社会に於けるはぐれ者や脱落者に対する不寛容さまでも見事に活写している。反社会的組織の取り締まりは必要だろうが、ヤクザをやめた人間の更生の道まで閉ざしていいものか。

 藤井監督は演出面でも技巧派で、様々な演出テクニックを最大限効果的に使える職人でもある。特に、異なる場所で同時に起きている2つ以上のシーンを交互に繋ぐクロスカッティングは、これまでの作品でも印象的な使われ方をしてきた。今回のクライマックスシーンでは、そのクロスカッティングが最高の効果を生み、「ゴッドファーザー」の有名な暗殺シーンを彷彿とさせる迫真の名場面を作り出している。

 また、時代の変遷に合わせてスクリーンサイズを変えたり、コンビナートのシンボリックな風景ショットを場面転換に数回使ったり(「デイアンドナイト」では風力発電のショットが同じように使われていた)、様々な工夫が凝らされている。

 俳優陣では、主演の綾野剛をはじめ、北村有起哉、尾野真千子、磯村勇斗が特に良かった。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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