岐阜新聞 映画部映画館で見つけた作品天国にちがいない B! 何が起ころうと顔色ひとつ変えない。沈黙は金なり 2021年03月02日 天国にちがいない ©2019 RECTANGLE PRODUCTIONS - PALLAS FILM - POSSIBLES MEDIA II - ZEYNO FILM - ZDF - TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION 【出演】エリア・スレイマン、タリク・コプティ、アリ・スリマン、ガエル・ガルシア・ベルナル 【監督・脚本】エリア・スレイマン 爆笑・苦笑・失笑・冷笑・嘲笑。笑いの種類がいっぱい 駐日イスラエル大使館のホームページを見て知ったが、イスラエル人口の24%(約170万人)は非ユダヤ人で、その大半はアラビア語を話すアラブ系市民ということ。うちイスラム教徒のアラブ人(約100万人)は、主に北部の小さな町や村に住んでいるが、キリスト教徒のアラブ人(約11万7,000人)は、主にナザレ・シュファラーム・ハイファなどの都市部に住んでいる。 本作の監督で本人役で主演もしているエリア・スレイマン(60歳)は、イスラエル国籍でキリスト教徒のアラブ人、いわゆるパレスチナ人である。 本作の主人公・映画監督ES(エリア・スレイマン)は、自分の目の前で繰り広げられる滑稽かつ奇妙な出来事を、何が起ころうと顔色ひとつ変えず、ポーカーフェイスかつ無言で対処していく。 スタートは生まれ故郷でもあるナザレの街。自分の庭のレモンの果実を勝手にもぎとる見知らぬ男、料理の味にイチャモンを付けるクレーマーとそれに冷静に対処するウェイター、雨の夜道で「隣人よ。小便が止まらん。次から次に出る」と訴える老人に傘を差し出すES。どれもこれも意表を突いた展開で、シニカルな笑いのシーンが続く。 続いてパリ。ブリジットを探す日本人カップルも可笑しいが、新作映画の企画を持ち込むも、「パレスチナ色が弱い」と言われてしまうESの落胆ぶりには爆笑である。 そしてニューヨーク。「パレスチナ人に初めて会った」というタクシー運転手の盛り上がりには苦笑し、映画学校での講義や映画プロデューサーの「健闘を祈ります」との返答には失笑を禁じ得ない。 風刺やアイロニカル満載のこの映画は、爆笑・苦笑・失笑・冷笑・嘲笑など、笑いの種類がいっぱいだ。 原題は、“It Must Be Heaven”で日本語タイトルと同じ。自己承認を求めて旅だったが、パリもニューヨークもナザレと一緒、甘んじて受け入れましょうと皮肉に満ちている。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2022年05月25日 / 死刑にいたる病 観客も翻弄されるサイコサスペンスの秀作 2022年05月24日 / ハチとパルマの物語 父との和解、パルマとの信頼、コーリャの成長物語だ 2022年05月24日 / 今はちょっと、ついてないだけ 心に傷を負った人たちのリスタートの物語 more 2021年10月27日 / 【思い出の映画館】西尾劇場(愛知県) 愛知県郊外の映画館でギュウギュウ詰めで映画を楽しむ。 2022年02月09日 / 岩波ホール(東京都) エキプ・ド・シネマの想い出に感謝を込めて。 2018年12月26日 / 高崎電気館(群馬県) 閉館された映画館にふたたび灯がともる時 more
爆笑・苦笑・失笑・冷笑・嘲笑。笑いの種類がいっぱい
駐日イスラエル大使館のホームページを見て知ったが、イスラエル人口の24%(約170万人)は非ユダヤ人で、その大半はアラビア語を話すアラブ系市民ということ。うちイスラム教徒のアラブ人(約100万人)は、主に北部の小さな町や村に住んでいるが、キリスト教徒のアラブ人(約11万7,000人)は、主にナザレ・シュファラーム・ハイファなどの都市部に住んでいる。
本作の監督で本人役で主演もしているエリア・スレイマン(60歳)は、イスラエル国籍でキリスト教徒のアラブ人、いわゆるパレスチナ人である。
本作の主人公・映画監督ES(エリア・スレイマン)は、自分の目の前で繰り広げられる滑稽かつ奇妙な出来事を、何が起ころうと顔色ひとつ変えず、ポーカーフェイスかつ無言で対処していく。
スタートは生まれ故郷でもあるナザレの街。自分の庭のレモンの果実を勝手にもぎとる見知らぬ男、料理の味にイチャモンを付けるクレーマーとそれに冷静に対処するウェイター、雨の夜道で「隣人よ。小便が止まらん。次から次に出る」と訴える老人に傘を差し出すES。どれもこれも意表を突いた展開で、シニカルな笑いのシーンが続く。
続いてパリ。ブリジットを探す日本人カップルも可笑しいが、新作映画の企画を持ち込むも、「パレスチナ色が弱い」と言われてしまうESの落胆ぶりには爆笑である。
そしてニューヨーク。「パレスチナ人に初めて会った」というタクシー運転手の盛り上がりには苦笑し、映画学校での講義や映画プロデューサーの「健闘を祈ります」との返答には失笑を禁じ得ない。
風刺やアイロニカル満載のこの映画は、爆笑・苦笑・失笑・冷笑・嘲笑など、笑いの種類がいっぱいだ。
原題は、“It Must Be Heaven”で日本語タイトルと同じ。自己承認を求めて旅だったが、パリもニューヨークもナザレと一緒、甘んじて受け入れましょうと皮肉に満ちている。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。