岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

地方の老人問題を絡めた愛すべき成長物語

2021年02月16日

おもいで写眞

©「おもいで写眞」製作委員会

【出演】深川⿇⾐、⾼良健吾、⾹⾥奈、井浦新、古⾕⼀⾏/吉⾏和⼦
【監督・脚本】熊澤尚人

挫折を味わったヒロインが新たな生きがいを見出す

 熊澤尚人監督は、これまで「虹の女神 Rainbow Song」、「おと・な・り」、「君に届け」といった素敵な映画を撮ってきたが、この「おもいで写眞」もそれらと肩を並べる愛すべき作品だ。

 カメラマンを主役にした映画では、昨年高い評価を受けた「浅田家!」と比べても見劣りしない。むしろ、個人的には「おもいで写眞」の方が私の心に響く作品だった。「浅田家!」の家族写真に対し、「おもいで写眞」はひとり暮らしのお年寄りの写真を本人が希望する思い出の場所で撮るというもの。

 東京で夢破れ、親代わりに自分を育ててくれた祖母の死をきっかけに故郷に帰ったヒロイン(深川麻衣)が、役所から老人向けの遺影写真の撮影の仕事を引き受けたことから、新たな生きがいを見出し成長していく姿を描いた、熊澤監督のオリジナルストーリー。

 ヒロインが誰にでも好かれる人柄でなく、幼少期に受けた心の傷の為、融通の利かない性格で対人関係に問題を抱えるキャラクターなのがいい。そして、役所に勤め彼女に仕事を世話する幼馴染(高良健吾)とのやりとりがほほえましい。感情の起伏が激しい彼女と、「横道世之介」を思い起こさせるいつも穏やかでマイペースな彼はまさに好対照。

 熊澤監督が長年温めてきた企画らしく、地方の老人問題を絡めた、とても心の籠った温かみのある成長物語に仕上がっている。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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