岐阜新聞 映画部

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韓国の軍政崩壊前夜を描く実話サスペンス

2021年02月11日

KCIA 南山の部長たち

© 2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】イ・ビョンホン、イ・ソンミン、クァク・ドウォン
【監督】ウ・ミンホ

大統領暗殺の謀反は"本能寺の変"か?

 2月1日。ミャンマーで軍事クーデターが勃発した。アウンサン・スーチー国家顧問は、再び軟禁状態に置かれている。民主化が成立したのは2016年のことで、これはまだ記憶に新しい。民主化は見掛け倒しだったのか?

 韓国は南北分断後の独立で大統領制がひかれ、初代大統領には李承晩(イ・スンマン)が就任した。李は朝鮮における独立運動家とみなされているが、アメリカの信任をうけた傀儡色が強かった。しかし、アメリカ軍と南北戦争で力を持った国軍を盾に、次第に独裁的な剛腕を振るい、12年に及ぶ長期政権を維持した。

 その後も軍人による大統領政権が続き、漸く、民主化が実現したのは1987年のことだった。同年12月の第13代大統領選は、71年以来の直接選挙によって行われた。当選したのは盧泰愚(ノ・テウ)で彼は軍人出身だった。そもそも選挙前に民主化宣言をしたのが、民生党の党首であった盧で、民主化は世論の推すところでもあった。皮肉なことに、当時の野党側が統一候補を擁立できず、選挙は与党の勝利となる。盧泰愚は軍人出の最後の大統領となる。

 『KCIA 南山の部長たち』は、1963年12月~1979年10月までの長期にわたり韓国の第5~9代大統領を務めた朴正煕(パク・チョンヒ)の時代の話である。(第18代大統領・朴槿恵は次女)

 1979年10月26日。この日、韓国の朴大統領が暗殺された。このニュースは今も記憶にある。

 その40日前、アメリカの下院で開かれた公聴会で証言したのは、KCIAの元部長パク・ヨンガクだった。亡命者となり籠から世に放たれた鳥は、朴大統領の政権内部の腐敗ぶりを一気に暴露する。激怒した大統領は事態の収拾を側近の中央情報部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン)に命じる。

 スピーディーな展開で舞台は韓国からアメリカ、フランスへと広がる。登場人物たちの複雑な心理を繊細に描写し、張り詰めた緊張感を維持し、結末に導くストイックなウ・ミンホ監督の演出が秀抜。キム部長の"義"を貫く光と影を哀しく美しくイ・ビョンホンが好演している。 余談だが、朴大統領は最も韓国に貢献した大統領と今も評価されている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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