岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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「裏を見せる笑い」で、ニコニコ顔になれる映画

2021年02月10日

新解釈・三國志

Ⓒ2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

【出演】大泉洋、ムロツヨシ、橋本さとし、高橋努、橋本環奈、岩田剛典、渡辺直美、城田優、佐藤二朗、賀来賢人、山本美月、岡田健史、矢本悠馬、半海一晃、小栗旬、磯村勇斗、阿部進之介、山田孝之
【監督・脚本】:福田雄一

都合のいい歴史は疑ってかかれというアンチテーゼ

 あまりの酷評で観る気が失せていたが、興収30億円突破という大ヒットと、何よりうちの事務所の若者の「面白かったですよ」の推しにより、封切りから1か月以上たってから観てきた。

 私の本業・障害者の就労支援では、期待されて会社に入ると「期待外れ」となることが多いが、期待されずに入ると「案外出来るじゃん」と評価が上がる。出来る人でも「出来ないモノが多いです」と言って入った方が長続きするのだ。イメージ戦略である。

 本作はまさにコレ。全く期待せずに観たのが幸いした。「案外笑えるじゃん」。

 観終わった後の観客はニコニコ顔。「面白かったね」と満足した感想が、ソコカシコで聞こえてくる。私も嬉しくなってきた。

 酷評を全部読んだわけではないが、多くあったのが「クスリとも笑えなかった」との感想。これは笑いに関する感性の問題なのでどうしようもない。

 『新解釈 三國志』は、ウェルメイドな笑いでも上品な笑いでもない。芸達者な役者たちが、己のギャグや体型・パーソナリティを存分に利用したナンセンスな笑いに終始している。このアドリブっぽい楽屋落ちのショートコントを笑えるかどうかが、映画を楽しめるか楽しめないかのキーとなってくる。人を選ぶ映画だとも言える。

 福田雄一監督は、役者のトーク技術や空気感を大切にする。ドリフや欽ちゃんの時代の、台本のある計算された笑いよりも、「ひょうきん族」やとんねるずに代表される、パロディや楽屋落ちなどの「裏をみせる笑い」を得意とする。もちろん前者を否定するわけでなく、笑いを追及していく中で到達した、現段階での結論なのだ。

 私は、この映画のような力の抜けた笑いも嫌いではない。というか馬鹿馬鹿しい笑いは大好きである。

 「三國志」だって後年作られた歴史読みものなのだから、見方を変えれば「アリ」かもしれない。為政者に都合のいい歴史は疑ってかかれというアンチテーゼなのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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