岐阜新聞 映画部

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五代友厚を知って維新を知る伝記映画

2021年02月04日

天外者

Ⓒ2020 「五代友厚」製作委員会

【出演】三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵、筒井真理子、蓮佛美沙子、生瀬勝久、内田朝陽、迫田孝也、六角慎司、丸山智己、徳重聡、かたせ梨乃、田上晃吉、榎木孝明、八木優希、ロバート・アンダーソン
【監督】田中光敏

三浦春馬の熱演が生き急いだ姿に重なる

 幕末ものは嫌いである。小説、ドラマ、映画、ジャンルを問わず、ぶっちゃけて言えば性に合わない。威勢のいい掛け声がこだまし、英雄は伝説のように活躍する時代に見えなくもない。確かに、大きな時間の流れの中で、長く続いた徳川幕府に代わる新たな体制を築こうとする機運は存在したのだろうから、個人を引き立てれば、そこにはそれなりの英雄譚が生まれる。日本を変えようとするお題目は、実のところ個人の私利私欲におさまってしまうのが実情で、武士道とか藩への忠臣はお飾りに過ぎない。横行した殺し合いはテロルであり、革命は反逆だった。

 『天外者』は薩摩=鹿児島の方言で"てんがらもん"と読ませ、すごい才能の持ち主という意味がある。この映画の主人公は薩摩藩士・五代友厚(ごだいともあつ)であり、彼が日本の夜明けに如何に関わったかを描いた伝記となっている。

 冒頭、幕末の悪口を言った手前、その知識の浅さを告白しなければならない。五代友厚については、殆ど何も知らなかったことを…。

 2015年秋からNHKの連想テレビ小説で放映された「あさが来た」は、京都の老舗の次女として生まれたヒロイン"あさ"が、大阪の嫁ぎ先の店を動乱の世から守り、発展させていく話で、劇中、五代友厚(才助)が登場する。演じたのはディーン・フジオカで、当時、香港、台湾、インドネシアで活躍していた彼の、日本での出世作となった。五代のカリスマ性を持った爽やかな人物像は"五代様ブーム"を引き起こした。五代を知ったのはこのドラマがきっかけだった。

 映画の冒頭、薩英戦争の時、イギリス海軍に捕縛され罪人となる若き日の五代が描かれる。幕吏や攘夷派から睨まれるようになった五代は、長崎に潜伏することになるが、そこで貿易商トーマス・グラバーと懇意になる。五代の先進性を象徴する出来事であり、坂本龍馬との出会いがある。

 五代を演じたのは昨年亡くなった三浦春馬で、生き急ぐ姿が、嫌が上にも重なって見えるのが辛いが、終盤、大阪の商人たちをまとめ上げていく演説の凄みは圧巻の熱演だ。今更ながら惜しまれる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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