岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ほろ苦いけど心温まるコメディの佳作

2021年01月14日

声優夫婦の甘くない生活

【出演】ウラジミール・フリードマン マリア・ベルキン
【監督・脚本】エフゲニー・ルーマン

移民夫婦の波乱に富んだ再出発

 1990年、ヴィクトル(ウラジミール・フリードマン)とラヤ(マリア・ベルキン)の夫婦は、イスラエルへ移住して来る。

 ソ連の時代には、ハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍したふたり。新天地での新たな希望に胸を躍らせているのだったが…。

 ソ連が崩壊する前の1985年、ロシアでは愛国主義を掲げた勢力が台頭し、反ユダヤ主義が公然と掲げられるようになった。ユダヤ人のソ連からの亡命者は70年代から増え始めていたが、それを加速させた機運が国内にあったことは想像に安い。

 声優夫婦はイスラエルへの移民であり、亡命ではないが、そこには国を追われたという寂しさが見え隠れする。

 新天地での生活は問題が山積されていた。最大の誤算はイスラエルでは、声優の需要がないことだった。

 ヴィクトルにようやく声がかかった仕事は、ロシア移民団体の緊急放送の録音だったが、それもギャラなしのボランティア。ビラ配りの仕事では、足にマメを作って挫折する。慣れない舞台俳優への挑戦を模索するが、スクリーンに映る俳優の声の演技だけしかしてこなかった後遺症は、身体で表現する演技の術を忘れてしまっていた。

 一方、ラヤは新聞の求人欄で見つけた仕事の面接に向かう。電話のオペレーターはテレフォンセックスの相手だったが、ここで、ラヤは思わぬ才能を発揮することになる。

 ヴィクトルも海賊版のレンタルビデオ店で声優=吹替の仕事を得るが、そこには違法という後ろめたさがあるのだった。

 映画には夫婦が声優時代に関わったハリウッドやヨーロッパ映画へのオマージュが散りばめられ、往年の名作は映画ファンの心をくすぐる。特にイタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督には特別な愛情が込められる。それは自然にノスタルジーへ誘う導火線にもなっている。

 ガスマスクを装着した映画館の観客といったシュールな映像、独特の間のある会話から生まれる演技はユーモアに溢れ、心温まる佳作に仕上がっている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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