岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

身も心も大いに元気にさんざめく、お婆映画の誕生だ

2021年01月07日

おらおらでひとりいぐも

© 2020 「おらおらでひとりいぐも」製作委員会

【出演】田中裕子、蒼井優、東出昌大、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎
【監督・脚本】沖田修一

歳をとっても老けこまず、陽気に笑って過ごしましょう

 内閣府の「高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(2016年発表)」によると、65歳以上の一人暮らし高齢者は、1980年の男性約19万人・女性約69万人から、2015年には男性約192万人・女性約400万人と増加。高齢者人口に占める割合は、男性13.3%・女性21.1%となっている。

 本作は、55歳で夫を亡くし63歳で作家デビューした若竹千佐子さんの芥川賞受賞作を、44歳の沖田修一監督がどう料理するかが大きな見どころのひとつだ。

 沖田作品は、何気ない日常をスケッチ風に描き、登場人物の会話やしぐさをさり気ないユーモアで包み込んだ、おっとりした映画が多い。

 そんな作風の沖田監督が、老境を独りで迎えて寂しかろう婆を主役に、あたかも「おもちゃ箱をひっくりかえした」ような、身も心も大いに元気にさんざめく映画をこしらえた。歳をとっても老けこまず、陽気に笑って過ごしましょうとエールを送っているのだ。

 本作の主人公・桃子(田中裕子・実年齢65歳)は、75歳の一人暮らし高齢者。認知症が始まっている様子もなく、まだまだ若い。図書館に通って、地球の歴史なんかを勉強している。でも初めてやってきた「自由」をどう味わったらいいか、どう楽しんだらいいか、ちょっととまどっている。

 1964年、結婚3日前に故郷を飛び出し単身上京した若い頃の桃子さん(蒼井優)。辛くもあったが、前途明るい未来にむかってたくましく生きていた。

 昔と今の桃子さんが対峙した、面白い趣向で映画は進んでいく。

 ただ私が少し寒かったのは、桃子さんの自問自答・心の声として登場する「寂しさ」トリオ(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)。このメンバー、何故か男性で、お喋りでガサツで騒々しい。おまけにギャグが上滑り気味。かろうじて乾いた笑いの空気が、鼻から出るのみだった。

 私の86歳の母は同居だが認知症進行中で要介護1。大事にするか。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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