岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

稀代の名作は、こうやって生まれた!すったもんだの内幕コメディ

2021年01月01日

シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!

© LEGENDE FILMS – EZRA – GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA – EZRA - NEXUS FACTORY - UMEDIA, ROSEMONDE FILMS - C2M PRODUCTIONS

【出演】トマ・ソリヴェレス、オリヴィエ・グルメ、マティルド・セニエ、トム・レーブ、リュシー・ブジュナー
【監督・原案・脚本】アレクシス・ミシャリク

無名の韻文劇作家が放った、一発逆転ホームラン

 19世紀末から第一次大戦勃発(1914年)前の約25年間、フランスはベル・エポック(良き時代)と呼ばれる市民社会が花開いた時代で、華やかな文化や生活を楽しんでいた。

 そんな時代の真っただ中の1897年、鳴かず飛ばずだったエドモン・ロスタンが、わずか3週間で書いたお芝居「シラノ・ド・ベルジュラック」は、パリで大当たりをとり一躍時代の寵児となった。

 本作は、俳優コクラン(オリヴィエ・グルメ)から、「喜劇」を条件にオファーされた無名の劇作家ロスタン(トマ・ソリヴェレス)が、友人の恋文を代筆したことからヒントを得て、周りの人を巻き込みながら私生活を物語にぶち込み、すったもんだのあげく初日になんとか間に合わせた、怒涛の3週間を中心に描いた映画だ。

 彼はそれまで少し時代遅れの韻文喜劇を書いており、大女優のサラ・ベルナール(クレマンティーヌ・セラリエ)には贔屓にされてはいたものの、作品は難解で冗長だと評判が悪かった。そんな時やってきた突然の大チャンス!

 映画は、わがままな女優、バーターで押し付けられた素人役者、注文の細かいスポンサー、嫉妬で怒り狂う妻など、次々降りかかる無理難題について、ギリギリでロスタンが切り抜けていく様子をコメディタッチで描いていく。きらびやかな劇場、華やかなファッションもあいまって、映画は賑やかに彩られていく。

 この「知的で強い正義感を持ってはいるが醜い鼻のゆえ好きな女性に告白できない男が、同じ女性を好きになった美男だが賢くない友人の恋の仲裁役をつとめる」という骨子は、様々な映画や芝居に影響を与えている。例えば友人の恋文の代筆をするところは、岩井俊二監督の『ラストレター』だし、山田洋次監督の車寅次郎のキャラクターには少なからず影響を与えていると思う。原作戯曲の映画化は、1990年のジェラール・ドパルデュー版が素晴らしい。

 大変よくできた内幕ものである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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