岐阜新聞 映画部

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ナチスから逃れ移民となった家族の物語

2020年12月25日

ヒトラーに盗られたうさぎ

© 2019, Sommerhaus Filmproduktion GmbH, La Siala Entertainment GmbH, NextFilm Filmproduktion GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

【出演】リーヴァ・クリマロフスキ、オリヴァー・マスッチ、カーラ・ジュリ
【監督】カロリーヌ・リンク

逞しい生き様は暗い世相を忘れさせる異色の反ナチ映画

 今年も何度か書いたことだが、本作も反ナチスを描いた映画である。題名にも登場するヒトラーがドイツ国内で政治的な力を獲得する総選挙が行われる、1933年冬のベルリンがはじまりの舞台。

 9歳のアンナ(リーヴァ・クリマロフスキ)は兄のマックス(マルノス・ホーマン)と、無邪気にカーニバルを楽しんでいた。その夜、風邪で寝込んでいる父アルトゥア(オリヴァーマスッチ)が母ドロテア(カーラ・ジュリ)と、深刻な様子で話し込んでいる様子を見てしまう。

 翌朝、母から告げられたのは、家族でスイスに逃げるという決定だった。ユダヤ人で辛口な演劇批評家の父は、新聞やラジオでヒトラーに対する批判を続けていた。次の選挙でヒトラーが勝つことは、厳しい弾圧の始まりを意味する。すでにその風向きを感じたからの決断だった。アンナは引越しのために持っていけるものと、置いていかなければならないものの、仕分けを命じられる。

 アンナは家の家具やピアノ、お手伝いさんのハインビー(ウルスラ・ヴェルナー)に別れを告げる。そして大好きな"ピンクのうさぎのぬいぐるみ"に再会を約束しベルリンを後にする。

 原作はジュディス・カーが、1971年から書きつなぎ79年に完結した3部作の小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」で、この作品は児童文学の古典として世界中で読みつがれている。映画はこの小説の"移民文学"の要素も忠実に映像化している。

 スイスで暮らし始めたアンナは、すぐに生活にも馴染み、平和な日々を送っていたが、訪ねて来たユリウスおじさんからは、ヒトラーの力が強まり、ベルリンの家はナチスによって何もかも奪い去られたことを告げられる。あの大好きな"ピンクのうさぎのぬいぐるみ”も。

 アンナの家族の逃避行は、スイスからフランス・パリ、イギリス・ロンドンへと続く。

 父母のどちらかと言えば、大人の事情の絡んだ不器用な生き方とは対照的に、アンナとマックス兄妹は、言葉にも慣れ柔軟に逞しく成長していく。反ナチも忘れてしまう異色の作品となっている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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