岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品星の子 B! 両親に寄り添う健気な少女の成長譚 2020年12月24日 星の子 ©2020「星の子」製作委員会 【出演】芦田愛菜/永瀬正敏、原田知世 【監督・脚本】大森立嗣 信じることができれば愛に包まれていれば 原作は令和になって初の第161回芥川賞を「むらさきのスカートの女」で受賞した今村夏子の同名小説。読む人によって姿を変えるという、独特の作風で注目される作家の初の映像化である。 ちひろは、父(永瀬正敏)と母(原田知世)の次女として生まれた。未熟児だったこともあってか、赤ん坊のちひろは、病弱でアレルギー性の疾患に悩まされていた。両親は様々な療法を試すが、回復の兆しはなく、夜泣きも絶えることなく、育児崩壊寸前までに追い込まれていた。 そんな時、父の知人である落合さん(池内万作)から"金星のめぐみ"という水を勧められる。特殊な生命力を宿したというその水で、ちひろの体を洗うと、病状はみるみると改善した。 それを機に、両親は怪しげな宗教に心酔し、謎の団体に引き込まれて行くのだった。 林ちひろ(芦田愛菜)は高校受験を控えた中学3年生に成長した。友だちにも恵まれて、普通の中学生として生活していたが、家では水の力を信じてた両親が行う儀式=水を浸したタオルを頭に載せて暮らすことが日常になっていた。 5歳年上の姉のまーちゃん(蒔田彩珠)は、そんな両親と生活をすることを拒否するように家を出てしまった。伯父の雄三(大友康平)もそんな家族に心を傷め、ちひろのことを気にかけていた。 映画に登場する"金星のめぐみ"は、人の弱みにつけ込む悪徳な商法に見えなくもない。終盤に現れる、宗教団体の総会のような集まりについても、ある確信に囚われてしまった人々が集う集会という異様さが際立つが、団体の幹部の若者は、カリスマ性こそ備えてはいるが、ソフトな面持ちで、異様なという世界観からは遠く描かれている。これは特定な宗教を連想させることなく、否定するのではないという意図なのだろうか? ちひろの周りには、理解のある友だちがいる。親類の伯父伯母従兄弟の心情も伝わる。和解から遠いままの姉や、憧れの先生から突きつけられる心ない言葉にも、自らを見失うことなく、健気に両親に寄り添う。ちひろは天使なのか? 個人的には居心地の悪さは拭えることはなかったが…。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年09月26日 / 君は行く先を知らない 暢気なユーモアが緊張に変わるロードムービー 2023年09月26日 / 君は行く先を知らない シリアスな内容を、ユーモアと詩情で包んだ瑞々しい映画 2023年09月25日 / ふたりのマエストロ 指揮者親子のハートフルコメディ more 2021年10月13日 / 【思い出の映画館】千日前セントラル(大阪府) 戦後の活気ある商店街でアメリカ映画を送り続けた。 2022年04月13日 / 長崎セントラル劇場(長崎県) 父から引き継ぐ映画館で映画の灯を守り続ける。 2020年02月05日 / 福知山シネマ(京都府) 城下町にある映画館は幅広い年代から支持されている more
信じることができれば愛に包まれていれば
原作は令和になって初の第161回芥川賞を「むらさきのスカートの女」で受賞した今村夏子の同名小説。読む人によって姿を変えるという、独特の作風で注目される作家の初の映像化である。
ちひろは、父(永瀬正敏)と母(原田知世)の次女として生まれた。未熟児だったこともあってか、赤ん坊のちひろは、病弱でアレルギー性の疾患に悩まされていた。両親は様々な療法を試すが、回復の兆しはなく、夜泣きも絶えることなく、育児崩壊寸前までに追い込まれていた。
そんな時、父の知人である落合さん(池内万作)から"金星のめぐみ"という水を勧められる。特殊な生命力を宿したというその水で、ちひろの体を洗うと、病状はみるみると改善した。
それを機に、両親は怪しげな宗教に心酔し、謎の団体に引き込まれて行くのだった。
林ちひろ(芦田愛菜)は高校受験を控えた中学3年生に成長した。友だちにも恵まれて、普通の中学生として生活していたが、家では水の力を信じてた両親が行う儀式=水を浸したタオルを頭に載せて暮らすことが日常になっていた。
5歳年上の姉のまーちゃん(蒔田彩珠)は、そんな両親と生活をすることを拒否するように家を出てしまった。伯父の雄三(大友康平)もそんな家族に心を傷め、ちひろのことを気にかけていた。
映画に登場する"金星のめぐみ"は、人の弱みにつけ込む悪徳な商法に見えなくもない。終盤に現れる、宗教団体の総会のような集まりについても、ある確信に囚われてしまった人々が集う集会という異様さが際立つが、団体の幹部の若者は、カリスマ性こそ備えてはいるが、ソフトな面持ちで、異様なという世界観からは遠く描かれている。これは特定な宗教を連想させることなく、否定するのではないという意図なのだろうか?
ちひろの周りには、理解のある友だちがいる。親類の伯父伯母従兄弟の心情も伝わる。和解から遠いままの姉や、憧れの先生から突きつけられる心ない言葉にも、自らを見失うことなく、健気に両親に寄り添う。ちひろは天使なのか? 個人的には居心地の悪さは拭えることはなかったが…。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。