岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

相撲と力士に肉薄したドキュメンタリー

2020年12月23日

相撲道~サムライを継ぐ者たち~

© 2020「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」製作委員会

【監督】坂田栄治

伝統に特化することなくエンターテイメントとしての描いた先に見えるもの

 両国国技館は、忠臣蔵赤穂浪士の討ち入りの場・吉良邸にもほど近い隅田川の右岸にある。色とりどりののぼり旗がはためき、威勢の良い触太鼓が聴こえる。見物客は真ん中に土俵の鎮座する相撲場に吸い込まれるように入って行く。

 相撲の国技館と言えば、蔵前にあった記憶が鮮明にあるが、この両国国技館が開業したのは1985年のことで、すでに35年になる。元々、国技館は両国にあったが、それは相撲の興行が近くの回向院で行われていたという縁による。当時の建物は円形のコロシアムのような形で、天井はドーム型だった。大正期に失火と関東大震災に被災している。

 場内の騒めきは高揚感をかき立てる。呼出や行司の声が土俵への注目を集める効果となる。力士が土俵には上がり、緊張感がたち込める。不思議な静寂の中、力士の息遣いや、身体を叩く音が響く。繰り返される"しきり"の間にも歓声や響めきがうねりのようにおし寄せる。軍配がかえり、ぶつかり合う力士の巨体が上げる衝突音、息を止めた一瞬の後、うめきのような声がそれに混ざる。

 映像の緊迫感と少し誇張された場の音が生みだす効果。『相撲道 サムライを継ぐ者たち』はオープニングから一気に観客を"相撲"へ誘う。

 "相撲道"という言葉には、日本の伝統を担う厳しさが含まれ、他のスポーツとは一線を画す。映画ではそれを力士の日常にみつけようとする。相撲部屋という場所には、クラブとかチームとは違う世界がある。

 境川部屋と高田川部屋が前後に映し出される。そのふたつの部屋は、古き良き時代の相撲部屋の雰囲気を持っているという。張り詰めた雰囲気の朝稽古の風景。少し薄暗い土俵上でぶつかり合うふたりを取り囲む力士の輪は、土俵の輪郭を狭める。独特の稽古風景。

 境川部屋の部屋頭・大関豪栄道(現・武隈親方)は"忍"の人。寡黙でストイック。高田川部屋ノホープ竜電は一度はどん底を味わったが、表情豊かな青年。焦点が当てられるふたりの力士の対比も面白い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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