岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

宗教は人を救うのか、破滅させるのかを鋭く描く

2020年12月24日

星の子

©2020「星の子」製作委員会

【出演】芦田愛菜/永瀬正敏、原田知世
【監督・脚本】大森立嗣

見ている我々が、どう判断しどう向き合うか

 私は一応、浄土宗西山深草派の門徒で、鹿川神明宮の氏子であるが、調査で「冠婚葬祭以外に信仰している宗教は無い(2018年・NHK放送文化研究所調)と答えた62%に入る平均的日本人である。ちなみに結婚式は名古屋の布池教会で行った。

 普段の会話で信仰に関する話はめったに出ないが、葬式に参列すると、その人の宗教がわかって興味深い。坊さんがおらずひたすら念仏を唱える葬式や、紅白幕で飾られ目出度いとされる葬式、無宗教で献花と弔辞のみの葬式など、しきたりを知らず戸惑う事がある。

 本作の主人公は中3のちひろ(芦田愛菜)。赤ん坊の頃病弱だったが、父(永瀬正敏)と母(原田知世)が「金星のめぐみ」という宇宙のパワーを込めた水を与えたところ、瞬く間に全快する。それ以来その水を全ての生活に取り入れ、ひたした白い手ぬぐいを頭に乗せて「河童みたい」な格好でお参りもしている。

 ちひろにとって、住んでいる家はどんどん小さく貧しくなっていくけれど、両親の仲はいいし、迷惑な布教活動もしていないし、子どもたちに常軌を逸した教義を科してもいない。純粋で素直な女の子として育っている。

 でもお姉ちゃんは家に寄り付かないし、大好きな南先生(岡田将生)からは、自分の親を「不審者」呼ばわりされ、雄三おじさん(大友康平)からは、「水道水を飲んでるだけ」とののしられる。ちひろの心は揺れ動くが、両親と共に宗教団体ののセミナーに参加はする。

 勝手に答えを出さないのが大森立嗣監督だが、本作ももちろん、いいの悪いのなどと言っておらず材料を提示するだけ。見ている我々が、どう判断しどう向き合うかなのだ。

 社会の多様性の中、当然信ずる宗教も色々だ。神社で購入する「お神札(ふだ)」はよくて、新興宗教の「お水」が偽物だと誰が決めるのか?社会を破壊したり、殺人を正当化するような宗教でなければいいのではないか?考えさせられる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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