岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ある主婦のありのままを見つめた秀作

2020年12月17日

82年生まれ、キム・ジヨン

© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

【出演】チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン
【監督】キム・ドヨン

閉じた社会を開くために声を上げること

 人は皆、それぞれに、独立しているが、人はひとりでは生きていけない。故に、そこには関係性が発生する。親子や兄弟姉妹の血の繋がりから、友人や同僚、恋人から夫婦へと関係は進展する。

 家族や組織や共同体のようなかたまりの中、そこには意識の共有をはじめとした絆が生まれる。

 しかし、それは幻想に過ぎないことに気づく時がままある。ここで突きつけられるのが、人は孤独であるという現実である。 ジヨン(チョン・ユミ)は、広告代理店に就職し、充実した社会人生活を送っていたが、結婚という大きな節目を迎え、退職する道を選択した。専業主婦となり、子どもを授かり、家事と育児に追われる日々が続いていた。

 夫のデヒュン(コン・ユ)は、最近の妻ジヨンの様子に不安を抱いていた。さり気なく、問いかけてみたが、「少し疲れてはいるが、大丈夫」と、自らに言い聞かせるような反応しか戻ってこない。

 その心配はデヒュンの実家への里帰りで露見する。ジヨンは義母たちの目の前で、突然、別人格に憑依する。

 男女の性差による格差は、日本では社会問題として度々取り上げられている。例えば、管理職に就く女性の割合は低く、諸外国からも指摘を受けるほど、女性の活躍の場は狭められている。これに似た問題は韓国社会にも存在している。

 『82年生まれ、キム・ジヨン』でも、ジヨンの高校時代の回想で、男子にストーカー紛いの行為を受けるエピソードがあり、ジヨンの父親は娘の危機をよそに「お前の態度に問題がある」と一方的に決めつける。また、就職が決まらないジヨンに「嫁にでも行け!」と言い放つ。これは韓国社会に根強くある"家父長制"や性差の差別の顕著なかたちを示している。

 医師に助けを求めたデヒュンだったが「本人が来なければ…」と諭される。夫婦はそこで向き合い、自覚のないジヨンに症状を伝える。夫婦が医師の前に立つ幕切れには、明日への光明が見える。

 閉じこもるしかなかった女性が声を上げても良い…このメッセージは心を打つ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (10)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る