岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品82年生まれ、キム・ジヨン B! 女性の生きづらさを優しく描き出した傑作 2020年12月17日 82年生まれ、キム・ジヨン © 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved. 【出演】チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン 【監督】キム・ドヨン 男女問わず、誰にとっても身近な映画となっている 韓国映画と聞いてパッと思い浮かべる作品はどんなものだろうか。過激でハードなバイオレンス。ドライかつブラックな娯楽。政治を描いた骨太な社会派。私は近年の韓国映画はこのような力強い傑作が多いという印象を持っているわけだが、本作「82年生まれ、キム・ジヨン」はハードな内容ながら優しいタッチで主人公に寄り添った1本。まさに“良質な映画”という表現がピッタリである。 本作で描かれるのは、女性の抱える生きづらさ。本作の主人公、キム・ジヨン(チョン・ユミ)は社会の「女は家庭に入るもの」「夫を支えるもの」という固定概念によって精神的に追い詰められていく。加えて幼い子供連れに向けられる周囲の冷たい視線。男性優位な社会構造が残る中でいかに女性が幼いころから周囲の”女性像“に振り回されているのかが良くわかる。そしてそれは韓国社会だけでなく、日本社会にも大いに当てはまるものだろう。 また、キム・ジヨンの夫の存在が本作をより身近なものにしている。彼は妻に寄り添い、常に気に掛ける優しい夫。しかし、どこか抜けていて、気が回らずに妻をイライラさせてしまう。これはどこの家庭でも女性が感じていることではないだろうか。ある時ふと母親が「男は結婚しても子供が生まれても環境は変わらないけど、女はどんどん環境が変わっていく」とこぼしていたことを思い出す。それほどまでに身近な映画なのだ。 さて、これまでは内容面について触れてきたが、実は技術面でも優れているのがこの映画。本作は現在と過去、2つの時制を行き来する構成で展開していくのだが、この時制の変わり目が実に上手く編集されている。ごく自然に、さりげなく色調が変化し、現在から過去に、過去から現在に移行する。その鮮やかさ。普通に観ていたらスルーしてしまうほど地味なテクニックだが、そのさりげない職人技がタッチの優しさを生み出し、本作を“良質”なものにしている。 そんな内容と編集テクニックが相乗効果となって、女性の抱える生きづらさを優しく描き出した本作は誰にとっても身近な映画となっている。女性なら共感することも多いだろうが、私は世の男性陣に観てほしいと思う。もしかしたら夫婦円満のヒントを得られる…かも? 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2020年10月28日 / 別府ブルーバード劇場(大分県) 子供に夢を与えたいという思いから始まった映画館 2024年04月17日 / 萩ツインシネマ(山口県) 歴史ある街並みを散策途中、ふと足を止めたくなる。 2024年07月03日 / T・ジョイ稚内(北海道) 日本最北の街にある映画館は冬でもホットな場所だ。 more
男女問わず、誰にとっても身近な映画となっている
韓国映画と聞いてパッと思い浮かべる作品はどんなものだろうか。過激でハードなバイオレンス。ドライかつブラックな娯楽。政治を描いた骨太な社会派。私は近年の韓国映画はこのような力強い傑作が多いという印象を持っているわけだが、本作「82年生まれ、キム・ジヨン」はハードな内容ながら優しいタッチで主人公に寄り添った1本。まさに“良質な映画”という表現がピッタリである。
本作で描かれるのは、女性の抱える生きづらさ。本作の主人公、キム・ジヨン(チョン・ユミ)は社会の「女は家庭に入るもの」「夫を支えるもの」という固定概念によって精神的に追い詰められていく。加えて幼い子供連れに向けられる周囲の冷たい視線。男性優位な社会構造が残る中でいかに女性が幼いころから周囲の”女性像“に振り回されているのかが良くわかる。そしてそれは韓国社会だけでなく、日本社会にも大いに当てはまるものだろう。
また、キム・ジヨンの夫の存在が本作をより身近なものにしている。彼は妻に寄り添い、常に気に掛ける優しい夫。しかし、どこか抜けていて、気が回らずに妻をイライラさせてしまう。これはどこの家庭でも女性が感じていることではないだろうか。ある時ふと母親が「男は結婚しても子供が生まれても環境は変わらないけど、女はどんどん環境が変わっていく」とこぼしていたことを思い出す。それほどまでに身近な映画なのだ。
さて、これまでは内容面について触れてきたが、実は技術面でも優れているのがこの映画。本作は現在と過去、2つの時制を行き来する構成で展開していくのだが、この時制の変わり目が実に上手く編集されている。ごく自然に、さりげなく色調が変化し、現在から過去に、過去から現在に移行する。その鮮やかさ。普通に観ていたらスルーしてしまうほど地味なテクニックだが、そのさりげない職人技がタッチの優しさを生み出し、本作を“良質”なものにしている。
そんな内容と編集テクニックが相乗効果となって、女性の抱える生きづらさを優しく描き出した本作は誰にとっても身近な映画となっている。女性なら共感することも多いだろうが、私は世の男性陣に観てほしいと思う。もしかしたら夫婦円満のヒントを得られる…かも?
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。